R5年度技術士(建設部門_必須)(5)勉強法〜インフラメンテナンス~

総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」~インフラメンテナンス第2フェーズへ~

2012年の笹子トンネル事故から10年、新たな提言がまとめられました(2022年12月)。
この提言に基づき、今後のインフラメンテナンスの取り組みが進められることでしょう。技術士試験の必須科目でも取り上げられやすいテーマでありますので、しっかり見ておきましょう!
ここでは、本提言で個人的に気になった部分を中心に整理していきたいと思います!

提言の全体像(概要)

概要はこの2ページに綺麗にまとめられていますね。背景、課題、これからの施策の方針、具体的に実行すべき施策といった、技術士試験でも回答としてそのまま書けそうな構成の提言となっています。
ここでは、それぞれ丁寧に見ていきましょう!

(出所:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001574051.pdf)

背景と課題

【背景】
『特に小規模な市区町村で人員や予算不足により、予防保全への転換が不十分であるだけでなく、事後保全段階の施設が依然として多数存在し、それらの補修・修繕に着手できていない状態であり、このまま放置すると重大な事故や致命的な損傷等を引き起こすリスクが高まる。』
と記載されています。特に新たな視点ではないですが、しっかりと頭に入れておきたい内容ですね。

【課題】
①メンテナンスサイクルの確立
②施設の集約・再編等
③多様な契約方式の導入
④技術の継承・育成
⑤新技術の活用
⑥データの活用
⑦国民の理解と協力
が項目として挙げられています。
技術士論文の記述の際に解決策に繋げて書きたい課題についてはしっかりと頭出しできるよう、準備しておきましょう。

これからの方針

今後の方針としては、以下2点があげられています。
• 事業者及び市区町村がそれぞれ機能的、空間的及び時間的なマネジメントの統合を図ることで持続可能なインフラメンテナンスを実現
• 国民の理解と協力から国民参加・パートナーシップへの進展等を通じた多様な主体による「総力戦」での実施体制の構築を図る

図としては、以下の2つがわかりやすいですね。複数・多分野の施設を「群」としてまとめて捉え、地域の将来像に基づき将来的に必要な機能を検討していくということが示されています。

(出所:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001574052.pdf)

速やかに実行すべき施策

実行すべき施策の柱として、以下5つ、あげられています。
(1)地域の将来像を踏まえた地域インフラ群再生戦略マネジメントの展開
(2)地域インフラ群再生戦略マネジメントを展開するために必要となる市区町村の体制構築
(3)メンテナンスの生産性向上に資する新技術の活用推進、技術開発の促進及び必要な体制の構築
(4)DXによるインフラメンテナンス分野のデジタル国土管理の実現
(5)国民の理解と協力から国民参加・パートナーシップへの進展

詳しくは提言本文によるところですが、『地域や分野横断』『DX、新技術活用』、『国民の参加』がわかりやすい打ち出しなのかなと感じました。

まとめ(感想)

提言として、管理者・所管に捉われないインフラのメンテナンスが取り上げられたことは大きな動きであると思っています。一方、平成の大合併のように、自治体をまとめるだけで解決するような問題ではないことも明らかでしょう。
いかにして、国土を保全していくのか、この提言の施策だけで良いのでしょうか?
世界的にみても日本は美しい四季があり、それぞれの地域(特に地方部)で守っていきたい風景・風土があるのではないかと思っています。
観光の文脈ではインバウンド、海外観光客誘致の話題がよく取り上げられますが、これらの地域特有の風土を守っていきたいと思ってもらえる『ファン』を世界に作っていくような取組が重要になってくるのではないでしょうか?
『日本国民』だけに頼るのではなく、『世界に目を向けた地域の魅力発信+維持していくために必要なことの発信を強化』することが、人口減少・少子高齢化を迎える日本の将来的なインフラの維持管理・更新に重要な視点になってくるのではないかと思っています。
今、web3などで世界と簡単に繋がることのできる時代になってきています。DAOのような組織が将来の株式会社のように当たり前の世界になっているのかもしれません。これからの成長が期待できる東南アジアやアフリカなどにファンをどんどん作っていくような取組、インフラも含んだ『地域の維持』に寄付してもらえるような関係性の構築に力を入れていくと『持続可能なインフラの維持管理』が実現するのかもしれません。
今のSDGsやインパクト投資といった流れをみると、世界の富裕層や投資家に注目されるような動きを日本のあらゆる地方で活発化していくことが求められているのではないでしょうか?
皆さんも、本提言をきっかけに、『もっとこんなことが考えられるのではないか?』と思案してみると面白いと思いますので、ぜひ考えていきましょう!