R5年度技術士(建設部門_河川)(10)勉強法〜河川機械設備のあり方~

今回は、いわゆる「河川」とは離れた機械ネタですが、最近のトレンドとして「河川機械のマスプロダクツ化」なども取り上げられる機会が多いので、知識に入れておくと引き出しが増える(インフラメンテやDXなどの解決策の一つ)と思い、令和4年7月にとりまとめられた『河川機械設備のあり方について』勉強していきたいと思います。

河川機械設備のあり方について(答申の概要)(令和4年7月)

まずは、全体像を把握するために概要をみていきましょう。

課題

河川機械設備をとりまく状況と課題としては、
・大更新時代の到来(設置後40年以上の施設急増)
 →経済的・効率的・効果的な更新の手法と技術開発
・担い手不足の深刻化(従事技術者、運転操作員の減少、高齢化)
 →維持管理・操作の省人化・効率化と安全性向上
・気候変動に伴う水害の激甚化・頻発化
 →気候変動の影響を見込み施設能力の増強対応
があげられています

対策の基本的な考え方

対策としては、
・システム全体の信頼性確保
・遠隔化・自動化・集中管理への移行
・技術力の維持向上
の3本柱となっています。それぞれ詳しく見ていきましょう!

河川機械設備をとりまく現状と課題

現状と課題は以下のとおりまとめられています。
10年後には河川ポンプ設備の5割、ゲート設備で7割が設置後40年に達するなど、施設の老朽化が加速するようです。
担い手についても水門メーカの減少、若手技術者の減少が大きな課題となっている状況がわかりますね。

システム全体の信頼性の確保

上記課題を解決するための施策をここからは見ていきましょう!

(1)設計思想の転換

①総合信頼性の概念の導入
 ・これまでの予防保全、事後保全に加え、信頼性を確保する手法として『冗長化保全』を位置付けられています。短時間で復旧が可能、スペアーをシステムに組み込むといった新たな考え方ですので、頭に入れておきたいですね。
②機械設備のマスプロダクツ化
 ・故障時のリスク分散やメンテナンス性の向上、故障時の復旧迅速化などの効果が見込まれる取組です。
③気候変動に対応した運用と手戻りのない設計
 ・将来的な河川機械設備の改修を前提とした手戻りの無い対応を検討していく話です。これは特に新しい概念ではないですが、非常に重要な観点ですね。具体的に、『気候変動で想定される洪水・内水パターンの組み合わせにおいても施設の機能が確実に発揮されるよう、運用の見直しと施設設計への反映が必要』ともされています。

(2)メンテナンスサイクルの確立

①定期的な診断のための技術者・体制の確保
②維持管理の効率化(BIM/CIMの活用)
の2点があげられています。

(3)危機管理のあり方

①不測の事態に対応した必要最低限の機能確保
があげられています。具体的には、電源喪失、通信途絶等に対する危機管理対策を図ることで、ゲートにフラップ機能を内蔵したり、ゲート扉体に主導油圧ジャッキを内蔵したりの対応が考えられるようですね。

遠隔化・自動化・集中管理への移行

(1)基準の策定

遠隔操作での安全かつ確実な操作のため、監視機器類に関する基準を策定。インターフェースの統一化を目指すようです。

(2)運用体制の構築

運用体制としては、遠隔操作体制の構築を考慮した実施拠点の選定、バックアップ体制の構築などが考えられるようです。

技術力の維持向上

(1)技術力の維持向上

こちらは抜本的な解決策は難しそうですが、「地方公共団体への支援」として担い手育成などを進めていくことがあげられています。

(2)技術開発の推進

新たな技術開発手法としては、ニーズ側主導での技術開発及び社会実装を目指すとあります。マスプロダクツ化が例にあげられていますね。

(3)知識・情報の共有

こちらはデータベースの管理ということで、最近様々なデータベースやプラットフォームが立ち上げられていますが、うまく実際に運用されるような仕組みを産官学でしっかりと構築していけると良いですね!

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001493623.pdf)

まとめ

今回は、河川本体の施策ではないですが、非常に重要な河川機械設備について取り上げました。これからは土木屋もしっかりと機械の機能や運用であったりを把握して、しっかりと連携して取り組んでいく必要があると私は考えています。なかなか専門的な知識は追いつかないところですが、河川機械の『現状』『課題』『取組の方向性』は常日頃からチェックしておくと良いでしょう。技術士の試験においても、解決策の引き出しが増えるので、頭に入れておくと良いと思います!これを機に興味を持っていただけると幸いです。