技術士(上下水道部門)ゼロからチャレンジ(3)~下水道~

下水道の課題って何だろう?

下水道について、雨水対策関係は何となく治水との関係性で聞いたことのある内容もあるのですが、汚水対策などがどのようになっているのか、正直、ゼロベースなところです。
そんな中、技術士(上下水道部門)対策を考えると、下水道についても『基本的な課題』を知識としてインプットしておかなければ必須問題対応ができないと考え、調べてみることとしました。
何となく、課題の全体像の把握には、日本下水道協会HPに載っている、国交省水国局下水道部のR5年度概算要求資料を見てみると良さそうかなと思ったので、早速資料をみていきたいと思います。(出所:https://www.jswa.jp/wp2/wp-content/uploads/2022/08/4dbb249abb77eb7bbc6627b4ca6955f1.pdf)

※今回はまずは全体像の把握を目的に整理しました。個別は国交省水国局下水道部HPに詳しいかと思いますので、今後、深掘りする際には審議会・検討会・ガイドラインなども調べていきたいと思っています。

下水道事業のR5年度概算要求のポイント

まずは、概要をみて、ポイントが何かの勘所を探っていきましょう。
各種の政府方針や検討会報告等を踏まえ、以下の3本柱で施策展開を考えていることがわかりました。
・安全・安心の確保~国土強靱化の推進~
・快適な生活環境・水環境の向上~うるおいのある地域づくり~
・下水道事業の持続・成長~次世代を支える下水道の推進~
それぞれ、どのような内容なのか、課題を中心に参考資料も含めて内容を見ていきたいと思います。

安全・安心の確保

この柱には、『浸水対策』と『地震・津波対策』の2つが主要事項としてあげられています。
まず、全体像をみると、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策では、『流域治水対策(下水道)』、『下水道施設の地震対策』、『下水道施設の老朽化対策』があげられており、それぞれ目標が定められていることがわかります。

浸水対策

浸水対策については、
・流域治水(ハード対策、雨水浸水想定区域の早期指定など)
・リスクの高い下水道施設の耐水化についての耐水化計画を策定し5年程度で受変電設備やポンプ設備等の耐水化
の推進が求められているようですね!

他、参考資料として以下も一読しておくと良いでしょう。近年の災害、下水道法改正関連についてイメージ図もあるので、わかりやすいと思います。

下水道法、水防法の改正内容は頭に入れておきたいところですね。樋門等の操作ルール策定や民間施設の雨水貯留浸透施設整備に係る支援、雨水出水についてのリスク情報空白域を解消する取組など、重要施策だと思いました。

地震・津波対策

地震対策については、
・下水道施設の耐震化(マンホールの液状化対策やマンホールと管の接続部の可とう化)
・下水道BCPの策定
・マンホールトイレの整備
が主要施策として挙げられています!

快適な生活環境・水環境の向上

この柱には、『未普及対策』と『公共用水域の水質保全』の2つが主要事項として挙げられています。それぞれ見ていきましょう!

未普及対策

下水道といえば『未普及対策』のイメージを強く持っていたところ。
現状、未だに約930万人の未普及人口が存在するようですね。
令和8年度末までの概成を目指した取り組み方針として
・下水道区域の徹底した見直し
・低コスト技術の採用
・効率的な工事発注方式の採用
の3つが重要だと示されていますね。このあたりもしっかりと勉強しておきたいところです。

公共用水域の水質保全

次に水環境管理について、見ていきましょう!
柱は
・既存施設を活用した段階的な高度処理の導入等の推進(既存ストックを活用した段階的な高度処理)
・能動的運転管理の取組を支援(下水放流水に含まれる栄養塩類の能動的管理)
・合流式下水道の改善(雨水吐に設置するきょう雑物の除去施設、雨水貯留管施設の整備)
の3つですね。

下水道事業の持続・成長

この柱には、『脱炭素化の推進』、『老朽化対策』、『DX』、『広域化・共同化、PPP/PFI、収支構造の適正化』、『下水道分野の国際展開』の5つの主要事項があげられています。それぞれ見ていきましょう!

脱炭素化の推進

従来から下水道施策と脱炭素(バイオマス、汚泥活用)は行われていますが、今の一番のトレンドですよね。
脱炭素化の施策としては、
・バイオガス・汚泥燃料等の創エネ
・省エネ設備の積極的な採用
が主なものなようです。
地球温暖化対策計画の目標設定も見ておくと良いですね。

次に省エネ・創エネの取組です。
省エネの事例としては、
「効率的な散気装置導入(運転の最適化と組み合わせ送風機の消費電力を2割程度削減)」
創エネの取組としては、
「下水汚泥をバイオガス燃料等として、自家消費・電力会社・発電所への供給等」
があげられています。
また、農業分野における下水汚泥の利用促進については、肥料利用やリン回収などが進められているようですね。

次に「脱炭素社会への貢献のあり方検討小委員会」報告書の概要についてです。
『グリーンイノベーション下水道』を目指す姿とする。
また、目標実現に向け強化すべき施策として
・地域の活性化・強靱化に貢献する循環システムの構築
・効率的なエネルギー利用と良好な水質確保の両立
・取組の加速化・連携拡大に向けた環境整備
・脱炭素化を支えるシステム・技術のイノベーション
・本邦技術の競争力強化と戦略的な国際展開
の5つの柱で施策展開をしていくこととしています。

老朽化対策

老朽化対策は分野横断的に取り組む内容ではありますが、下水道においても下水道施設全体の管理を最適化するストックマネジメントを推進しています。維持管理を起点としたマネジメントサイクルの確立など、ストックマネジメントの高度化を目指していますね。

DX

下水道におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)は、
・共通プラットフォームによる台帳電子化促進
・AIを活用した水処理運転操作の最適化支援
が具体的な事例として挙げられていることがわかります。内容もしっかり把握しておきたいところですね。

広域化・共同化、PPP/PFI、収支構造の適正化

広域化・共同化

人口減少、下水道職員現象、施設の老朽化が顕在化するなか、持続可能な下水道事業の運営に向け、令和4年度までの目標を設定し、広域化・共同化を一層推進しています。確認しておきましょう!

PPP/PFI

国交省のPPP/PFIで進んでいるのが下水道分野ですよね。
包括的民間委託やPFI(コンセッション含む)を今後も増やしていくことになるでしょう。
コンセッションの例示としては、『宮城県』の事例が示されています。これは下水道だけではなく、上水道、工業用水も含んだ形の運転維持管理・改修等のコンセッションです。このような取組が他自治体でも進んでいくのかもしれません。技術士の回答作成にあたっても例示として勉強しておくと良いでしょう!

収支構造の適正化

収支構造の適正化についても取組が進められています。交付金の要件化、国によるセミナーや優良事例の提供等を通した取組を行っているとのことです。

下水道分野の国際展開

下水道は国際展開にも力を入れていますよね。特にアジア地域の汚水処理には川上段階からの案件形成を目指しているようです。あまり技術士試験とは関係ないかもしれませんが、頭の片隅に入れておいても良いでしょう。

(出所:https://www.jswa.jp/wp2/wp-content/uploads/2022/08/4dbb249abb77eb7bbc6627b4ca6955f1.pdf)

まとめ

今回はまず下水道事業の全体像・課題を網羅的に把握していきました。
強靱化、老朽化、未普及、DX、脱炭素などあらゆる課題があることがわかりましたね。
これだけではまだまだ技術士の論文試験に耐えうる知識にはなりませんが、これをきっかけにいろいろとHP等を調べて解決策を具体的に記述できるだけの知識を蓄えていきたいと思います。