R5年度技術士(建設部門_必須)(7)勉強法〜新たな国土形成計画~

いま、新たな国土形成計画の議論が行われている最中

今、デジタル田園都市国家構想などとも整合を図る形で、新たな国土形成計画の策定に向けた議論が行われているところです。2023年夏頃を目途に議論が進められているところですが、国土という大きな観点から政府の向かおうとしている方向性の把握には重要な資料等が既に多く公表されています。
技術士の勉強にも役立つ部分もあるでしょうし、日ごろのお仕事にも役立つことも多く含まれていると思いますので、ご紹介したいと思います!

国土形成計画とは?経緯?

【国土形成計画】
国土形成計画は、国土形成計画法に基づく、国土の利用、整備及び保全(「国土の形成」)を推進するための総合的かつ基本的な計画。
国土形成計画法は、2005年に、従来の国土総合開発法を抜本的に改正し、本格的な人口減少社会を迎え、量的拡大から国土の質的向上を図るとともに、地方分権時代に即した国土計画を策定する仕組みに転換。

【経緯】

全総時代からの、国土計画の変遷がまとまっている資料もありましたので、参考にお示しします。
地域間の均衡ある発展、多極分散型国土構築、対流促進型国土の形成などの動きがうまくまとめられています!これだけで非常に勉強になる資料ですね。

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001517080.pdf)

新たな国土形成計画 中間とりまとめ

次に、令和4年7月に出された『中間とりまとめ』で、新たな国土形成計画の全体像を見ていきましょう!
打ち出しとしては、
・地域生活圏
・スーパー・メガリージョンの進化
・令和の産業再配置
の3つが軸のようです。

特に地域生活圏については、市町村界に捉われずに
①官民の多様な主体が共創して
②デジタルを徹底活用し
③生活者・事業者の利便を最適化しつつ
④横串の発想
という4つの原理を取り入れて、『人口規模の目安10万人』の地域生活圏を構築していくことが示されているところが新しい注目ポイントでしょう!

また、参考に令和3年6月にとりまとめられた「国土の長期展望」についてもお示ししておきます。深く知りたい方はこの時の議論から追ってみるのも面白いかもしれませんね。

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001517080.pdf)

国土の刷新に向けた重点テーマ

『目指す国土の姿』や検討中の『国土の刷新に向けた重点テーマ』が示されていますね。
目指す国土の姿としては、
・デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり
・巨大災害、気候危機、緊迫化する国際情勢に対応する安全・安心な国土づくり
・世界に誇る多彩な自然と文化を育むグリーンな国土づくり
があげられています。

また、国土の刷新に向けた重点テーマについては、
・デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成(重層的な官民パートナーシップ、関係人口や女性活躍等の地域人材の確保・育成等)
・持続可能な産業への構造転換(脱炭素×災害リスク対応型産業への円滑な移行、地域産業の稼ぐ力の向上等)
・グリーン国土の創造(地域の脱炭素化、自然資本の活用拡大等)
・人口減少下の国土利用・管理(地域管理構想の全国展開、国土管理DX等)
の4つが示されています。この4つのテーマについてそれぞれ見ていきましょう!

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001571992.pdf)

デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成

『地域生活圏』は今回の新たな国土形成計画のメインの打ち出しですね!
■市町村界に捉われず、官民のパートナーシップにより、デジタルを徹底活用しながら、暮らしに必要なサービスが持続的に提供される地域生活圏
として定義されています。既に進んでいる市町村をまたいだ包括管理などもこれから一層進んでいくとともに、データ連携基盤の整備などデジタル化も進んでいくことが期待されているようですね!
この考え方は、技術士論文試験でも要チェックだなと思いますので、「背景」「課題」から「解決策」までしっかりと自分の言葉で記述できるよう準備しておくと良いでしょう!

論文には具体的な事例も盛り込むことが必要なので、以下の取組のうち、特に国交省に大きく関連するような取組についてはしっかりと把握しておきましょう!地域交通のリ・デザインや自動運転、ウォーカブルなまちづくり、インフラメンテナンスは押さえておきたいところです。

規模イメージとして、1時間圏内人口10万人程度以上の集積のあるエリアを想定しているようですね。ここもポイントの1つでしょう。

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001572022.pdf)

持続可能な産業への構造転換

次に、「産業」の話題です。
課題として、
・人口減少による国内需要の縮小、労働力不足の深刻化
・巨大災害リスクの切迫
・国際経済を含めた競争環境の激変
・地域産業を取り巻く課題
があげられています。

そして、解決の方向性、持続可能な産業への構造転換として、
■成長産業の分散立地等の促進や既存コンビナート等の強化・再生
・GX・DXの推進、経済安全保障の観点からの企業の立地戦略等も踏まえた成長産業の分散立地等の促進
・既存コンビナート等のGX成長投資の促進と巨大災害リスク対応による基幹産業拠点の強化・再生
■地域産業の稼ぐ力の向上
・地域産業における成長と分配の好循環の構築
・地域産業を担う人への投資拡大(働きがいある雇用の拡大)
があげられています。

個人的に興味があるのは、経済安全保障上の半導体や蓄電池の確保ではあるのですが、技術士(建設部門)の論文で触れると良いと思うのは、「防災(南海トラフ等巨大地震などの巨大災害リスク対応)」と「地域産業の担い手確保」でしょうか。
防災に関する打ち手としては、示されているBCPくらいしかないのかもしれませんが、新たな官民連携策・支援策による災害対応力の強化も考えてみても良いのかもしれません。
地域の担い手確保の打ち手としては、特に女性や高齢者等の雇用促進を図る人への投資拡大という文脈は建設業におけるDX化の進展も大きく関係する部分だと思います。今、地域の安全・安心を支えている地場の中小建設業が縮小傾向にあることが非常に大きな課題となっていますよね。それにどう立ち向かっていくのか、これを機に考えていくことも重要でしょう!

ここでは、「稼ぐ力の向上」に向けた対策の方向性が示されています。課題はよく言われている内容(人口減少、魅力的な仕事不足、後継者不足、デジタル・グリーン、海外市場)です。
対策の方向性としてあげられているのが、
■ローカルとグローバルの観点からの生産性・競争力強化
・地域産業における成長と分配の好循環の構築(地域資源を活かした産業創出、イノベーション・スタートアップの創出、事業継承対策強化、DX・GX推進、グローバル需要の取り込み)
・地域産業を担う人への投資拡大(働きがいのある雇用の拡大)(若者、女性、高齢者、障がい者、外国人等の雇用促進、経営人材・デジタル人材・グローバル人材等の育成・拡大)
です。
これらも非常に重要な観点なので、一度勉強しておくと良いでしょう。

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001579870.pdf)

グリーン国土の創造

「グリーン国土」についてはイメージしやすいかなと思います。
「自然と共生するグリーン国土の創造」として
・カーボンニュートラルの実現を図る地域づくり
・30by30による健全な生態系の保全・再生
・グリーンインフラによる複合的な地域課題の解決
・自然資本の持続可能な活用による地域活性化等
があげられていますね。

この部分は課題も建設部門に関する方はよく触れてきた部分でしょうし、グリーンインフラも最近は市民権を得てきていろいろな取組が進められてきている状況下にあると認識しています。特に「河川」分野を選択するつもりのある方は、環境の文脈でもこうした政府の大きな動きを捉えつつしっかりと背景・課題・解決策を記述できるように準備を進めていきましょうね!

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001579871.pdf)

人口減少下の国土利用・管理

最後に「国土管理」です。この施策は私の中で咀嚼できていない中身なのですが、紹介だけさせていただきますね。

■国土利用・管理の基本的な3つの視点■1~3に共通する横断的な2つの視点については理解することができます。

次に出てくる「国土の管理構想」についてはもっと良く知らなければならない分野ではあるのですが、
■地域管理構想の策定意欲を喚起するための仕掛けづくり
■地域管理構想の効果的な実施を支援するための仕掛けづくり
が提案されています。

結局、計画倒れになってしまうことが無いよう、どのように実効性をもった取組を実施していくことができるのかがキーかなと思っています。

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001572023.pdf)

今後のスケジュール

今後は、2023年夏頃の閣議決定を目指して、計画部会、国土審議会が開催されていく模様です。技術士試験までに計画原案などは示されていることでしょうから、情報ウォッチを続けていくと良いでしょう!

(出所:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001579874.pdf)

まとめ

今回は「新たな国土形成計画」の動きをご紹介しました。技術士論文執筆の際の背景・課題の補強には間違いなく繋がる内容が盛りだくさんだと感じたので、これを機にぜひ一度、国土形成計画の改正の議論の行く末を見守っていくことをオススメします!
多くの方に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。