【解答骨子】R4技術士(建設部門)勝手に出題予想(10)〜必須『建設業界対応』〜   

2022年3月25日

今回取り上げる出題予想テーマ

これまで過去問分析をしたり、予想したり、勉強資料・勉強法について綴ってきました。

今回は、実際に、出題予想テーマから想定問・解答骨子を作っていきたいと思います。

第四弾として『建設業界対応』について作ってみますね!

私もまだまだ未熟な技術者ですが、受験者の皆さまの頭の体操の参考にしていただけると幸いです。

(あくまでも私の勉強の仕方の一例という観点で見て下さい。A評価が取れるかは全くわかりませんのでご参考程度にしてください(苦笑))

建設業界対応

今回は『建設業界対応』について、取り上げたいと思います。

過去問では「中小建設業の担い手確保」がテーマとされたこともありましたよね。同じテーマは出ないでしょうが、最近の賃上げの動きや残業時間規制の動きを踏まえた出題は可能性があるのではないかなと考えています。『必須科目』での出題可能性のあるテーマだと考えています。

想定問作成

では、必須科目を想定して問い立てから始めていきたいと思います。

まずは、調べたりせず、自分自身でどれだけ解答を書けるか試してみましょうね。

問立て

令和3年12月新しい資本主義の「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化会議」において、「公共調達における労務費等の上昇への対応」及び「公共工事品質確保法等に基づく対応の強化」が取り上げられたところである。
賃上げを積極的に行う企業には公共事業での調達(総合評価落札方式)において加点措置がなされるなど、建設業界への影響も非常に大きい。
品確法等の趣旨の徹底についても、公共工事の発注者はもちろん民間発注者に対しても適正単価や適正工期の確保を求めることとしている。
また、令和6年4月には建設業界への「時間外労働の上限規制」も始まることとされており、建設業界全体の働き方改革・変革は待ったなしの状況にある。
このような状況を踏まえて以下の問に答えよ。

(1)技術者として多面的な観点から3つ課題を抽出し課題の内容を示せ。

(2)最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を複数示せ。

(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と、新たな懸案事項への対応策を示せ。

(4)(1)~(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

↓(参考)新しい資本主義 パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化会議 ↓

4.公共調達における労務費等の上昇への対応【デジタル庁・経済産業省・厚生労働省等】
来年度から新たに、賃上げを積極的に行う企業(※)の申請に対する加点を実施する。
(※)大企業であれば給与等受給者一人当たりの平均受給額を前年度比3%増、中小企業であれば給与総額 1.5%増
・情報システムやビルメンテナンス等の公共調達において、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇分を反映した調達価格となるよう、公共工事における公共工事設計労務単価制度を参考に、調達の対象となる資産・サービス毎に、デジタル庁と業種を所管する省庁などが連携して、発注者として標準単価を設定し、これに基づく公共調達を行うことを検討する。特に、情報システムの公共調達においては、契約単価のデータベース化等により、再委託・再々委託先も含めた賃金の適正化等に向けて取り組む。

5.公共工事品質確保法等に基づく対応の強化
(1)公共工事品質確保法等の趣旨の徹底【国土交通省】
・公共工事の発注者(地方整備局、都道府県、市町村、地方公社等)に対し、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の取引価格を反映した適正な請負代金の設定や適正な工期の確保について、契約後の状況に応じた必要な契約変更の実施も含め、公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成 17 年法律第 18 号)の趣旨を踏まえて対応を図るよう、周知する。
・公共工事のみでなく、民間発注者に対しても、同様の適正な請負単価の設定や適正な工期の確保を求めるとともに、毎年1月から3月までの「集中取組期間」において、国土交通省が請負代金や工期などの契約締結の状況についてのモニタリング調査等を実施する。

shiryou3.pdf (cas.go.jp)

↓(参考)時間外労働上限規制↓

(出所https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/content/contents/000812940.pdf

解答骨子作成

ここでは上記であげた問に対して、それぞれ解答骨子を考えていきましょう!

なお、この解答骨子は、いろいろと調べながら書き上げたものです。

正直、業界対応の動きについてはそこまで詳しく無いことから、問立てや解答骨子の作成に苦労しました。非常に難しいですね。

また、本問については、技術的というより、労働問題や業界対応なので、もし出題されたとしても積極的に解答する方は少ないかもしれません。しかし、発注者も受注者も勉強しておくことが重要な分野でもあると思っていますので、もしお時間があればご一読いただけると幸いです。私もこれを機会に勉強になりました。

まず、基本的な解答骨子の作り方は『施策背景』『課題』『解決策』で書いていくんでしたね。

この方針で解答骨子を作成していきます。

解答骨子

施策背景

担い手3法(品確法、建設業法、入契法)が改正され、建設業界においても新3K(給与、休暇、希望)を実現するための各種取組が進められてきているところである。また、労働時間管理についても、建設業にも令和6年4月に時間外労働規制が適用されるなど、働き方改革はまったなしの状況となっている。加えて、建設業就業者の減少や高齢化も大きな課題となっており、これらを解決し、地域の安全・安心を確保するための様々な取組が求められている。

(1)3つの課題

建設業界の課題への対応』を進める上で重要な観点として、

  1. 働き方改革
  2. 生産性向上
  3. 災害時の緊急対応強化

の3つを抽出する。なぜなら、新担い手3法(品確法、入契法、建設業法)の目的でも示されているように、働き方改革につながる「適正な利潤を確保するための予定価格の適正な設定」、生産性向上につながる「インフラDX・i-Constructionの推進」、災害時の緊急対応強化につながる「建設業の中長期的な担い手確保」が重要であるからである。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. 建設業界のイメージの悪さ・魅力の低さ
  2. 特に中小建設業における新技術・デジタル導入障壁の高さ・生産性向上への取組の遅れ
  3. 年度内繁閑差による業務量の平準化・通年の雇用確保の問題

【課題1】3K(きつい、きたない、きけん)と言われるように建設業は大変厳しい労働環境にあることが世間一般の認識となってきた。これが建設業界全体のイメージの悪さ・魅力の低さへとつながっていると考えている。魅力が低いことにより、新たな担い手が建設業界を選びづらい状況が生じ、『地域の守り手』としての建設業全体が衰退していき国土の安全・安心の確保が図られない恐れがあることが大きな課題である。

【課題2】財務状況に比較的余裕の無い中小零細企業における新たなデジタルに関する投資ができないことにより、中長期的に生産性の向上が図れず、『地域の守り手』としての建設業の衰退につながることが課題となっている。

【課題3】現在、1年を通してみると第4四半期の業務量がピークとなっており、第一・第二四半期は比較的閑散期となっている。これにより、通年での建設技能者の雇用維持や工事量の確保が困難な状況が生じており、業務の平準化対策が大きな課題となっている。

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記1であげた『建設業界のイメージの悪さ・魅力の低さ』と考えている。

なぜなら、中長期的に見た際、一時的な補助金や雇用の確保策を講じたとしても、働き方をはじめとする業界全体の魅力が向上しなければ、建設業界の衰退・担い手不足につながり、『地域の守り手』としての建設業者が存続できなくなってしまうと考えられるためである。

解決策としては以下3点が考えられる。

  1. 新3K(給与・休暇・希望)の実現に向けた各種取組の推進
  2. 施工の遠隔化・自動化・自律化の推進等による安全で効率的な工事実施に資する技術開発・技術導入の促進
  3. 魅力ある業界への変革していることを対外的に周知するための広報戦略

【解決策1】近年、働き方改革が叫ばれており、建設業界にとっても非常に大きな課題となっている。これを解決するため、新3K(給与・休暇・希望)の実現に向け、「休暇」については土曜完全閉所日の設定や4週6休、完全週休2日を目指した取り組みが進められているところである。「給与」についても労働実態に応じて労務単価の引き上げを実施しており発注者側も取組を強化している。特に東日本大震災被災地においては復興係数を継続するなどの配慮もなされているところである。これら取組を通じて中長期的に「希望」の持てる業界へと変革を続けていくことが重要である。

【解決策2】3K(きつい、きたない、きけん)といったイメージを払拭するため、建設施工におけるDX・i-Constructionの取組を一層進めていく必要がある。具体的には、遠隔施工や施工の自動化・自律化などを通じた現場での危険作業の軽減、工期・人工の削減などが考えられる。

【解決策3】従来のイメージを変革する広報も非常に重要な取組である。i-Construction大賞やインフラメンテナンス大賞など国土交通省がアピールしている行政主導の取組に加え、民間企業それぞれにおいても主体的にSNS等を活用したイメージアップ戦略の一層の充実が必要と考えられる。

(3)波及効果と新たな懸案事項

上記(2)を実施した際の波及効果としては、『既存の建設業界だけではなく、大学発スタートアップなど新たな技術を持つ新規プレーヤーの建設業界への参入』が期待できる。既にVR技術であったりAIを活用した画像診断技術などのスタートアップ企業が出てきており、今後もこういった新技術の活用が一層進むものと考えられる。

また、上記(2)で述べた対策を実施しても残る新たな懸案事項としては、『公共調達における新技術の適用拡大・基準類の整備に時間を要することや国際標準への適合』があると考えている。

この課題への対応策としては、

  1. 国土交通省等行政だけではなく、最新の技術に知見を持つ「新技術の第三者認証機関」の活用・拡大
  2. 国総研等行政研究機関における、研究人材の組織強化・採用強化・育成強化、外部人材の登用強化
  3. 新技術開発の協調領域の明確化による、日本の建設業全体における民間企業の技術開発リソースの重点化・国際競争力の強化

などが考えられる。

(4)業務遂行にあたっての要件・留意点

『倫理、社会の持続性』の観点からは、以下の要件・留意点があげられる。

なお、技術士倫理綱領の『公衆の利益の優先』『持続可能性の確保』の観点も踏まえて述べることとする。

  • 現在、政府における課題としてデジタル化、国土強靱化と並び「脱炭素・カーボンニュートラル」の取組もあげられている。
  • 建設業界においても、国内建設業の中長期的な発展や海外(特に発展途上国)における技術支援や受注機会創出において、「脱炭素・カーボンニュートラル」の観点が非常に重要になってくることが想定される。
  • ESG投資やSDGsといった持続可能な社会の実現にも寄与する建設業界でなくては生き残っていけない社会が近く到来するであろうと考えている。
  • そのため、建設業者個別の魅力向上や競争力強化策を講じるだけでなく、世界の動向を注視し、日本全体における建設業界の舵取りを一層強めていくことに留意しなくてはならないと考えられる。

(参考)技術士倫理綱領

【前文】
 技術士は、科学技術が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して持続可能な社会の実現に貢献する。
 技術士は、その使命を全うするため、技術士としての品位の向上に努め、技術の研鑚に励み、国際的な視野に立ってこの倫理綱領を遵守し、公正・誠実に行動する。

【基本綱領】
(公衆の利益の優先)
 1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。

(持続可能性の確保)
 2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

(有能性の重視)
 3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

(真実性の確保)
 4.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。

(公正かつ誠実な履行)
 5.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。

(秘密の保持)
 6.技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。

(信用の保持)
 7.技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。

(相互の協力)
 8.技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。

(法規の遵守等)
 9.技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。

(継続研鑚)
 10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。

(参考)3義務・2責務

信用失墜行為の禁止、技術士等の秘密保持義務、技術士等の公益確保の責務、技術士の名称表示の場合の義務、技術士の資質向上の責務

解答のポイント

今回、解答を作成する上では、日本経済を支える国内の建設業界の動きを注視するだけでなく、世界の潮流や国際標準の動きなども観点として留意しておくことが必要だと感じました。

将来的には、人口減少社会・経済規模の縮小が考えられる日本だけではなく、途上国を中心とした成長する世界のインフラ整備に目を向けていく視野の広さが重要となってくるでしょう。

また、現在の主要な政策課題(官邸HPに載っているレベル)である、国土強靱化や脱炭素(カーボンニュートラル・GX)、デジタルなどの動きも踏まえたものとすることが、採点者側からしても採点しやすいのではないかなと考えています。

まとめ

今回は『建設業界対応』についてとりあげました。

3K(きつい、きたない、きけん)に代表されるように、何かとイメージの悪い建設業界ですが、国民の安全・安心のためには必要不可欠な業種であると考えています。

そのため、国としても担い手3法の施行等により新3K(給与、休暇、希望)の実現を目指して、様々な取組を現場レベル・本省レベルで進めているところと認識しています。

この業界が変革を伴いながら、新たなプレーヤーも参入しながら、自然災害が激甚化・頻発化する日本における『地域の守り手』として活躍し続けてくれる世の中になることを期待しています。

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