【解答骨子】R4技術士(建設部門)勝手に出題予想(7)〜必須『流域治水』〜 

2022年3月22日

今回とりあげる出題予想テーマ

これまで過去問分析をしたり、予想したり、勉強資料・勉強法について綴ってきました。

今回は、実際に、出題予想テーマから想定問・解答骨子を作っていきたいと思います。

第一弾として出題可能性が特に高いと個人的に思っている、『流域治水』について作ってみますね!

私もまだまだ未熟な技術者ですが、受験者の皆さまの頭の体操の参考にしていただけると幸いです。

(あくまでも私の勉強の仕方の一例という観点で見て下さい。A評価が取れるかは全くわかりませんのでご参考程度にしてください(苦笑))

『流域治水』

必須・専門どちらでも出題可能性が高いと踏んでいます。これを押さえていれば、もしかしたら必須科目と専門科目(河川)の両方に対応できるかもしれないと思っています。

その際、注意するのは、必須科目と専門科目で採点者が異なることを想定して解答をそれぞれ独立して記述することでしょう!

想定問作成

早速簡単に想定問を考えてみましょう。

汎用性が高くなるように、『必須』を想定してみます。

基本的には解答テーマ(今回は『流域治水』)に解答を持ってこれるような問であれば、どのような問でも対応できるように周辺知識を入れておくことが重要です。

早速、想定問を立ててみましょう!なんとなく、国会対応や委員会・会議等の想定問作成に似ている気がしますね。

まずは、調べたりせず、自分自身でどれだけ解答を書けるか試してみましょうね。

問立て

近年、気候変動の影響等により水害・土砂災害等の災害が頻発化・激甚化している。あらゆる関係者が連携して対応していかなければならない課題であり、その連携を強化していくことが必要不可欠となっている。

(1)技術者として多面的な観点から3つ課題を抽出し課題の内容を示せ。

(2)最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を複数示せ。

(3)(2)で挙げた解決策をすべて実施したとしても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)(1)~(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

解答骨子作成

ここでは上記であげた『流域治水』に関する問に対して、それぞれ解答骨子を考えていきましょう!

なお、この解答骨子は、一旦調べずに書き上げ、用語などを後から調べて修正した程度のものです。

本番で書けるレベルを想定して作成していますので、自分自身でもまったく完璧ではないと思っていますが、よりリアルな解答骨子になっているのではないかと思います。その前提で一読いただけるとうれしいです。

まず、基本的な解答骨子の作り方は『施策背景』『課題』『解決策』で書いていくんでしたね。

この方針で解答骨子を作成していきます。

解答骨子

施策背景

近年、気候変動の影響等により、令和元年東日本台風等激甚な災害が頻発している。

そこで、政府において、国土強靱化5カ年緊急対策が推進されているなど、自然災害に対する防災・減災対策が主要な社会課題となっている。

また、令和3年には流域治水関連法が成立し、政府一丸となって省庁横断で『流域治水』に取り組むこととなったところであり、具体的には関係省庁実務者会議にて「流域治水推進行動計画」がとりまとめられ、各施策が推進されている。

(1)3つの課題

『流域治水』を進める上で重要な観点として、

  1. あらゆる関係者間の連携(ソフト)
  2. 施設整備を計画段階からどう変えていくのか(ハード)
  3. 科学技術の進展をどのように流域治水に反映させていくのか(新技術)

の3つを抽出する。なぜなら、治水対策はソフト対策・ハード対策から成り立っていること、そしてその両方に通ずるものとして科学技術の進展を取り入れることが重要であるからである。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. 省庁・行政・住民等あらゆる関係者がいかに連携し、効率的・効果的な防災・減災対策を実行できるか
  2. 気候変動に対応した治水対策に関する計画立案及び計画に基づく施設整備の実践
  3. 行政による予算・人員が限られる中、いかにデジタルトランスフォーメーション(DX)の考え方を導入して、効率的な施設整備・施設管理ができるか

【課題1】既に関係省庁実務者会議において省庁間連携は図られているところであるが、避難指示等の発出・避難所運営を担う自治体及び住民の実行動にどう反映できるのかが大きな課題であると考えられる。

【課題2】気候変動により日本においては一度に降る降雨量の最大値が増大(1.15倍~1.2倍)することが国土交通省により示されている。これまでの整備計画が既往最大降雨を対象としてきたことに対して、これからは降雨量の増大を見越した整備計画の改正及び整備計画に基づく治水対策が必須となってきており、流域治水の考え方を取り入れ、各流域特性を踏まえた整備計画のあり方が課題となっている。

【課題3】予算・人員等が限られた中、いかにデジタル技術を活用して、効率的な施設整備・管理・運営ができるかということである。実際ドローンや遠隔施工、レーザー打音や点検へのAI等の活用など、建設業界にも新たなプレーヤーが参入してきているが、この傾向が更に強まり、デジタルを通じて業界全体が変革する必要があると考えられる。

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記1であげた『あらゆる関係者間の連携強化』と考えている。

なぜなら、限られた予算・人的リソースの中で、『住民等に命を守る行動を促す』ためには、必要な情報を届けたい人に適切に届ける必要性があり、『あらゆる関係者間の連携強化策』が比較的早期の効果発現が期待できると考えられるためである。

解決策としては以下3点が考えられる。

  1. 住民に対し最適な情報を伝達するための省庁・自治体間連携データプラットフォームの整備
  2. 流域治水関連法に基づく、利水ダム等の事前放流に関する協議会設置・ダムの運用ルールの高度化、国・都道府県・市町村等による雨水貯留浸透対策の強化
  3. 自治体・住民を巻き込んだリアリティのある防災訓練等の実施を通じた日常からの防災意識向上策の強化

【解決策1】現在、国土交通データプラットフォームはSIP4D、PLATEAU(3D都市モデル)、BIM/CIMデータなどあらゆるデータをつなぐハブ機能を有しており、そのデータ連携を加速しているところである。また、災害情報に関しても情報マルチモニタにより気象情報と水害・土砂災害情報が一覧できるようになっている。しかし、発災後の自治体による避難所運営状況や孤立した住民等の情報をリアルタイムで広域で一覧できるプラットフォームは無いリアルタイムで自治体と情報を共有するためのプラットフォームを整備し、それをベースに災害支援を検討することで、一人でも多くの命を救うことができる可能性が上がると考えられる。

【解決策2】利水ダム等も含めた事前放流の実施等運用ルールの高度化による流域全体の治水機能の向上、国・都道府県・自治体が連携した雨水貯留浸透対策の強化による地先の治水機能向上がはかられると考えられる。

【解決策3】現在の3D都市モデル等を活用した3Dハザードマップを駆使した防災訓練等を日常から実施していくことで、日ごろからの防災意識向上に寄与できると考えている。

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対応策

上記(2)で述べた対策を実施しても残る新たなリスクとしては、『要配慮者等デジタル弱者に対する避難情報等の適切な伝達が可能となるか』と考えている。

政府として、誰一人取り残さないことを目標として、デジタル田園都市国家構想を実行しているところであり、防災に関してもデジタルは欠かせないキーワードである。

デジタルを活用することにより、より高度で便利かつ即時性のある情報提供が可能となる一方、デジタルによる情報提供が主流となると、デジタル弱者には情報が届きづらい状況となってしまう。

これはデジタルにより行政サービスの効率化・省力化が図られる一方、日本の人口減少・少子高齢化、公務員の定員削減等により、職員との直接のやりとり等による丁寧な行政サービスの維持が将来困難になることが想定されるためである。

デジタルネイティブ世代が主流となる時代への移行期である現代において、特に要配慮者等への情報提供、避難行動を促すこと、避難誘導が大きな課題として残っていくであろうと考えられる。

この課題への対応策としては、

  1. 大河川の長時間先の水位予測等を活用した、大規模水害からの余裕を持った早期避難を促す取組の推進
  2. 住民等に直接対応する行政職員等にも負担の少ない、防災・減災に係るわかりやすいユーザーインターフェースの開発・改良
  3. 報道機関等とも連携した情報共有システムの一般住民等への普及促進

などが考えられる。

(4)業務遂行にあたっての要件・留意点

『倫理、社会の持続性』の観点からは、以下の要件・留意点があげられる。

なお、技術士倫理綱領の『公衆の利益の優先』『持続可能性の確保』の観点も踏まえて述べることとする。

  • 災害発生時にもレジリエントな地域を構築するため、『エネルギーの地産・地消を目指した脱炭素地域』を目指していく必要性にも留意する必要があると考えている。
  • 住宅や公共建築物への太陽光発電の導入促進に加え、河川や上下水道・工業用水といったあらゆる水エネルギーを中小水力発電として活用した地域社会を目指していくことにより、発災時にも自地域でエネルギーの供給が可能な社会を構築し、デジタル技術を通じて適時・適切な情報提供や避難誘導、避難行動を促すことが可能となるほか、避難所運営等における電力確保も可能となると考えられる。

(参考)技術士倫理綱領

【前文】
 技術士は、科学技術が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して持続可能な社会の実現に貢献する。
 技術士は、その使命を全うするため、技術士としての品位の向上に努め、技術の研鑚に励み、国際的な視野に立ってこの倫理綱領を遵守し、公正・誠実に行動する。

【基本綱領】
(公衆の利益の優先)
 1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。

(持続可能性の確保)
 2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

(有能性の重視)
 3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

(真実性の確保)
 4.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。

(公正かつ誠実な履行)
 5.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。

(秘密の保持)
 6.技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。

(信用の保持)
 7.技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。

(相互の協力)
 8.技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。

(法規の遵守等)
 9.技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。

(継続研鑚)
 10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。

(参考)3義務・2責務

信用失墜行為の禁止、技術士等の秘密保持義務、技術士等の公益確保の責務、技術士の名称表示の場合の義務、技術士の資質向上の責務

解答のポイント

解答を作成する上では、1つの観点だけではなく、現在の主要な政策課題(官邸HPに載っているレベル)である、国土強靱化(流域治水)や脱炭素(カーボンニュートラル・GX)、デジタルなどの動きも踏まえたものとすることが、採点者側からしても採点しやすいのではないかなと考えています。

まとめ

今回は『流域治水』についてとりあげました。

必須科目を想定しましたので、河川の視点というよりは全体像を意識した解答を作成しました。

政府の主要課題(防災・減災、デジタル、脱炭素)も組み合わせた解答を作成しましたので、勉強した内容を踏まえ、このようなあらゆる施策を組み合わせて解答できるように、自分の中で理解を深めておくと良いのではないかと思います。

また、専門科目河川での出題となれば、河川整備計画・基本方針の変更や利水ダム等との事前放流の調整、雨水貯留施設等の整備に関する下水道との連携、田んぼダム等他省庁の具体的な取組との連携、都市施策との連携、流域治水型災害復旧などを盛り込んで解答を作っていくことになるでしょう。

次回もお楽しみに!

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