非常に勉強になる一冊!『カーボンニュートラルプラットフォーマー』〜インフラ管理の将来を考える〜

『カーボンニュートラル』と『インフラ』の将来像を考える上で勉強になる一冊!

最近の私の関心事項である、脱炭素の流れとインフラの関係性について、面白そうな本があったので、瀧口信一郎氏著作の『カーボンニュートラルプラットフォーマー』を手に取ってみました!

カーボンニュートラル・プラットフォーマー [ 瀧口信一郎 ]価格:1,980円(2022/8/21 20:11時点)

多様な分野にまたがる話を、基本的なところから最新動向まで抑えられており、とにかく面白い一冊でした!

なかなかインフラ全体とカーボンニュートラルを絡めた書籍が少ない中、防災やレジリエンスの話題とも絡めた上で、予算スキームなどにも少し触れられており、興味深く読ませていただきました。

本書を踏まえて考えてみたことを本記事では綴りたいと思います。

『カーボンニュートラル』をキーワードに変わる!

CO2排出量の多いエネルギー関連や電気自動車の文脈でとりあげられることの多い『カーボンニュートラル』ですが、既存のインフラ(発電やガスなど)の有効活用も考えていかなければならないと感じました。

公共施設・空間についても最近は『ウォーカブル』をキーワードにまちづくりが変わっていこうとしていますし、脱炭素関連ではエネルギーレジリエンス的な意味もあるエネルギーの地産地消に向けた各種取り組みが進んでいますよね。

民間企業においても、いわゆる『ESG投資』といった非財務価値にも重点をおいたインパクト投資の潮流があるので、これから民間企業も自主的に非財務価値に着目して取り組みが進んでいくことでしょう。

一時的なトレンド・流行に終わらずに、世界の中で取り残されることのないよう、取り組みが進んでいくことを期待しましょう!

電力とガスエネルギー

これからもエネルギー供給の安定性や工場等の高出力エネルギー需要に応えるためには、電力とガスがエネルギー供給の中心になっていくものと思っています。
全体としては、電化の流れは進むでしょうが、都市ガスが無くなることはないのでは?と思います。
そのガスも今はLNG中心かと思いますが、これからは将来の水素ガスの供給に向けた取り組みが進んでいくのではないでしょうか。技術開発も必要な分野ではあるかと思うので、その分野への投資も非常に気になります。

『水素』社会が訪れる!?

第6次エネルギー基本計画では水素エネルギーはまだまだ主力化にはほど遠い位置付けではありますが、未来のCO2排出ゼロエネルギーの一つとして、素人ながら個人的に注目しています。これからは、電力の基礎から再生可能エネルギー・水素エネルギーまで教養の一つとして勉強しなくてはならない時代に来ているのかなと感じます。

都市ガス関係施設の有効活用へ

水素が脱炭素エネルギーの一つとして、主力化するにはパイプラインによる輸送を可能とする必要があるでしょう。その既存施設の老朽化対策、耐震化などもしっかりと進めつつ、将来の脱炭素社会へ向けた適応を考えていく段階にきていると思います。
その他の上下水道・通信などの埋設管の老朽化対策も合わせて合併施工することで、効果的・効率的な施設整備も進むので、官民連携した整備のあり方を具体的に進めていく必要があるでしょう!

『インフラ管理』も統合管理の時代に向かう?

整備だけではなく、管理も統合管理に向かうのでしょうか?もしくは流行りのPFIなど民間委託にしてしまえば全てがうまくいくのでしょうか?

よくある論調ですが、『ただ単に縦割りをやめて全部まとめてしまえば効率化できるだろう』という意見がありますよね。しかし『今の現場の現状』を踏まえると、おそらくトップダウンの掛け声だけではうまくいかないんだろうなと思っています。

結局、掛け声だけの無理矢理な統合は縦割り解消には向かわず、人も技術も縦割りのままで何も変わらないでしょう。毎年の予算を削ったように見せることができても、ただ管理水準が落ちたり現場職員に無理がいったりするだけな気がします。
現場では管理する施設がどんどん増えていく中、定員合理化による管理者絶対数の減少や、採用抑制による年齢構成のいびつさに伴う技術継承の問題など、既に疲弊してきている組織が多い中、『どこを目指して、どう移行させていくのか』に正面から向き合う必要があるでしょう。
各省各局が所管の利益を考えることなく、人口減少・少子高齢化で国力が衰退していくであろう日本において、『管理をどうすべきか』『複数施設を管理できる人間・組織をどう作り育てていくのか』『官民の壁をどうなくしていくのか』など議論は尽きないでしょう。
このような大きな社会課題に対して、ハードルは高いですが、管理主体である国や自治体、民間が一体となって『管理の方向性を示す』ことから始め、その目標に向けて一つ一つ、地道に進めていくしかないように思います。

戦略的な官民含めた人材交流の活発化が一つの方向性?

組織の利益を考えずに日本全体のインフラ管理のあり方を意識して働くためには、『人材育成、組織の風土や文化の変革』が欠かせないでしょう。

最近では、公務員(技術系)を目指す学生たちからも、『管理』に注目している方が多い印象があります。私のような古い人間はやはり『新設』に意識が向きがちなのですが、そのあたりの中堅人材の意識改革も必要不可欠でしょう。

そのためには『別組織で働いてみること』も非常に価値があると思います。場当たり的な人材交流ではなく、個人の意向なども踏まえた戦略的な人材交流をしていくことから始めてはいかがでしょうか?道路・河川・港湾・鉄道・空港・上下水道・通信・電力・ガスなどあらゆる分野がありますが、それぞれ管理を俯瞰できるポストを経験していくようなキャリアパスがあっても良いのではないかと思っています。

ぐるぐる回していくことで、視座も高まるとともに、組織文化・風土も把握できるため、将来の管理に関わる幹部人材として育成できるのではないでしょうか。横断的にわかる人材がいてこそ、『縦割りのままでも解決できること』も見えて来るでしょうし、『縦割りが障害になっていること』も見えて来るでしょう。
私が今、学生であれば、そのようなキャリアパスに魅力を感じるかもしれません。そんな未来を期待しています。