【私見】『盛土規制法』の成立を受けて〜長期的には建設資材(骨材)需要に対応するか?〜

2022年5月23日

盛土規制法成立

令和4年5月20日、盛土規制法が成立しましたね。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE192R20Z10C22A5000000/

記事によると、『都道府県などが規制区域を指定し、造成は許可制とする。無許可造成などをした法人には最高3億円の罰金を科す。2023年5月にも施行する。』とのこと。

熱海の土砂災害を受けて、点検などを実施してきましたが、改めてどういう経緯でできた制度なのか、制度内容はどういうものなのか、整理してみたいと思います。そして、その先の更なる展開について持論を述べたいと思います。

熱海土砂災害

令和3年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害は皆さん記憶に新しいのではないかと思います。

振り返ってみると、概要としては、以下のような大災害でしたね。

梅雨前線による大雨に伴い、令和3年7月3日10時30分頃に静岡県熱海市伊豆山の逢初川で土石流が発
生。逢初川の上流部標高約390m地点で発生した崩壊が土石流化し、下流で甚大な被害が発生。

001460104.pdf (mlit.go.jp)

(出所001460104.pdf (mlit.go.jp)

その後の盛土の総点検

熱海土砂災害を受け、全国にて盛土の一斉点検が行われました。

概要としては、

令和3年7月の静岡県熱海市における災害を受けて、8月11日に都道府県に対し、関係府省の連名にて総点検を依頼。

令和3年11月末時点で全国約3.6万箇所の点検対象のうち、約2.8万箇所(約8割)について目視等による点検完了の報告。

年度内に大半の都道府県で目視等による点検が完了見込み。

行為者等による是正が困難な場合には、都道府県等が危険な箇所の対策等を着実に実施できるよう、財政面も含め必要な支援を行うこととしており、「災害危険性の高い盛土(砂防指定地内等を含む)」について対応できるよう措置。

001460104.pdf (mlit.go.jp)

とのこと。

盛土規制法概要

では、今回策定された『盛土規制法』についてみていきましょう。

概要としては、これまでの制度では、盛土当の規制が必ずしも十分ではないエリアが存在したことを受け、

  1. スキマのない規制
  2. 盛土等の安全性の確保
  3. 責任の所在の明確化
  4. 実効性のある罰則の措置

を狙って制定されたものです。

詳細は以下概要をご覧ください↓

(出所001465744.pdf (mlit.go.jp)

まずは計画以上の盛土を定量的に把握すべき

まずは災害リスクの把握に必要な、違法な盛土箇所がどれだけ分布しているのか、『定量的』に調査する必要があるでしょう。

これまでのデータの蓄積具合や、技術的にも定量的に把握することは難しいと思います。しかし、例えば衛星画像の2時点比較などで算出していくなど、新たな技術を活用して過去からの土地の改変状況を網羅的に調べることができると良いと思います。

特に、これから新たに違法に土砂を捨て、盛土していくようなことをけん制していく上でも、衛星データの蓄積やデータ分析手法の開発などが進むことを期待しています。従来のように飛行機を飛ばして空撮してデータを整備することは、日本全国を対象とする場合、予算的にも大変厳しいものと想定されますので、比較的低コストである程度の精度の出せる衛星写真の活用が期待されると個人的には思っています。

短期的視野では『災害対策』として重要

人家等に被害の出る地域に対して、どれだけの土砂が流れ込むリスクがあるのか、これは砂防の知見を活かすことになるかと思います。私は砂防に詳しくないのですが、感覚的には、渓流の上流にある流出する可能性のある土砂の賦存量を算出して、シミュレーションするなどして確認していくことになるのではないかと思います。

現状把握だけでも非常に困難だと思われますが、二度と熱海土砂災害のような災害を起こさないという気概を持って、調査・検討・対策を進めていただきたいです!

長期的視野では『国産骨材』として重要になってくる?

災害から人命を守ることが最優先事項なので、まずはこの視点で事業を進めることになると思いますが、さらにその先も見据えると、今回の制度はどのようなことへの活用が想定できるでしょうか?せっかく盛土を把握する調査をするのですから、今後の日本の発展のためにどう活用すべきかも考えていくことが重要であると思っています。

骨材としての砂需要が世界的に旺盛で、資源として非常に重要になってきていることについては以下記事で紹介しました。

このような現状において、計画以上の盛土がなされている箇所の余分な土砂は建設資材として活用することができるのではないでしょうか。

新たに原石山を削って骨材を産出していくことは環境面でも良いとは言えないでしょうし、年々現場に近い適地がなくなり、コストもかかるようになってくることも考えられます。

もちろん適正な盛土量に減らすことは、下流地域の安全にもつながるでしょう。

そこで、CSGでハイダムも作れるようになったように、材料面での技術開発も必要かもしれません。

材料として均質では無いなどの課題はあるかと思いますが、これからの世界的な資源獲得競争の中、もし国内で調達できる可能性があるのであれば、活用しない手は無いと思われます。

将来のインフラメンテナンスを下支えする制度へ(期待)

日本の各インフラは老朽化が進展してきており、更新・改築などを行わなければならない施設もますます増えてくるでしょう。

その際、将来のコンクリート材料を自国でしっかりと確保していくことも重要な視点だと思います。

原材料コストが世界的に上昇した時に、国内で、決められた量を調達できるようにデータベース等で管理されれば、『下流地域の安全』だけでなく、『更新・改築・新設コストの削減』にも繋がる可能性を秘めていると考えています。

インフラに係る様々な問題が噴出してきている現状において、いかに効率的に対処していくのか、そして将来に良いインフラを残していけるのか、しっかりと考えていく一つのきっかけとしていただければ幸いです。

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