おすすめ!「砂戦争 知られざる資源争奪戦」を読んで

2022年5月8日

「砂戦争 知られざる資源争奪戦」石 弘之 著

今回は、「砂戦争 知られざる資源争奪戦」を読んでみた感想について、記したいと思います。

この書籍を読むまで、河川や海岸を専門としているのでなんとなく漂流砂など知った気でいましたが恥ずかしい気持ちになりました。とても面白い本でした。

海岸の砂浜の養浜であったり、ダムの排砂バイパスやフラッシュ放流などで対策が行われていることなど局所的な知識でしかなかったことに気づかされた一冊となりました。

世界的な資源・コンクリート材料としての「砂」の争奪戦が過去から繰り広げられてきている

『砂』といえば、コンクリートの材料であることは認識していましたが、本書を読み、世界的な開発ラッシュの中、川砂・陸砂だけでなく海砂なども不足してきているという状況にあることを初めて知りました。

本書前半は、最近のアジアやアフリカの乱開発に伴う砂需要の急増状況、砂資源確保の方法など新たに知ることができて非常に楽しく読むことができましたね!

また、ツバルの話に言及されたりもしていて、『自分がいかに世間のイメージに踊らされていたか』に気付かされた部分も多々ありました。気候変動の影響で海面が上昇してツバルが沈むというシナリオは、客観的なデータ分析によると事実ではなく、支援等を呼び込むための印象操作であるなど、衝撃的でした。

日本に暮らしていると当たり前のように建物が新しく建ったり、建て替えられたりする様子を見ながら暮らしていますが、その原材料の一部である砂・骨材を国内で調達したり輸入するなどして、確保することの大変さ、世界と繋がっていることを認識する場面も多く描かれていたように感じました。

建設リサイクルの重要性に改めて気づく

技術士建設部門でも出題されたことがありますが、『建設リサイクル』が今後の世界の社会資本整備にとって、重要性が増してくることについて本書を通じて学ぶことができました。

コンクリート塊やアスファルト塊の再利用率が高い日本の良いところをこれからも活かしつつ、今話題の廃プラスチックの再利用も建設資材として使うことが進めば、持続可能な社会に近づいていくのではないかと考えさせられました。

これからも日本においては、高度経済成長期に整備した橋梁等施設の急速な老朽化への対応や、激甚化・頻発化する自然災害からの復旧、事前防災対策など、建設資材を有効活用して国土の安全・安心の確保を図ることの重要性が増してくる時代を迎えると思っています。

今後、人口減少、少子高齢化社会が訪れる日本において、新たな材料を確保するための世界競争の中で勝っていけるだけの経済成長は期待できないとも思っています。

限られた国土・資源で安全・安心な暮らしを維持していくことは非常に難しいことなのだと突きつけられた気がします。

これまで整備した施設のリプレイスの際、最大限材料を有効活用していくことが将来にとっても重要であり、日本がその先導を担っていくことを期待しています。

これを機に、建設副産物のリサイクルなどの制度や現状についても勉強してみたいと思いました。

日本の建設リサイクルシステムを海外に売れないだろうか

途上国に比べ、日本におけるコンクリート塊やアスファルト塊の再利用率は高い状況にあると思います。

この分野に疎いので、既に積極的に働きかけているのかもしれませんが、これから途上国に対して、制度面からハード面まで建設副産物や廃棄物の再利用を促す取組を売り込んでいくことはできないのでしょうか?

アジア・インド・アフリカなどこれから発展が期待される地域においても、自国での建設資材確保が難しくなる時代が訪れていることを本書を通じて学びました。

骨材等のために国土を荒らしていくことを防ぎ、自然を守っていくことも非常に重要で、一国の取組というよりは世界の取組として進めていく必要があり、緊急性も高いでしょう。

ISOのような国際標準の作成や加盟国をどんどん増やしていく取組を先導していく役割を日本が担うことができれば、将来的にも途上国に対する日本のプレゼンスが維持・向上し、日本の仕事が増えるのではないかなと期待しています。(既に国際標準があるのであればすみません。)

最後に、本書は非常に勉強になる一冊でした。

私は日本国内の情報だけでもついていけていない状況ですが、世界にも目を向けると違った視点で物事を見られるようになるのかなと気付かされました。

技術士の勉強の合間にでもこのような書籍を読み、知識を広げておくと、全体像から個別施策の動きも見られるでしょうし、視座が高くなるのでオススメです!

忙しい社会人の皆さんも、落ち着いて新しい情報をインプットしていくことは非常に重要だと思いますので、無理のない範囲で興味ある分野の知識を入れていきましょう!・・・私はまずは復職を目指して頑張ろうと思います。

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Posted by SK