【解答骨子】R4技術士(建設部門)勝手に出題予想(9)〜必須・専門河川共通『脱炭素・カーボンニュートラル・グリーン』〜  

2022年3月24日

今回取り上げる出題予想テーマ

これまで過去問分析をしたり、予想したり、勉強資料・勉強法について綴ってきました。

今回は、実際に、出題予想テーマから想定問・解答骨子を作っていきたいと思います。

第三弾として出題可能性が特に高いと個人的に思っている、『脱炭素・カーボンニュートラル・グリーン』について作ってみますね!

私もまだまだ未熟な技術者ですが、受験者の皆さまの頭の体操の参考にしていただけると幸いです。

(あくまでも私の勉強の仕方の一例という観点で見て下さい。A評価が取れるかは全くわかりませんのでご参考程度にしてください(苦笑))

脱炭素・カーボンニュートラル・グリーン

今回は巷で話題沸騰の『脱炭素・カーボンニュートラル・グリーン』について、取り上げたいと思います。

このテーマはどちらかというと『必須』で出題される可能性が非常に高いテーマだと考えていますが、専門科目河川のⅢでも出題されるかもしれません。

想定問作成

まず、必須科目もしくは専門科目河川Ⅲを想定して問い立てから始めていきたいと思います。

まずは、調べたりせず、自分自身でどれだけ解答を書けるか試してみましょうね。

問立て

これまで「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」の構築を目指し、各般の施策を実施してきたところであるが、地球温暖化に伴う気候変動が国内外の自然環境や社会経済にもたらす影響の深刻化がよ
り一層懸念されるなど、環境分野における更なる対策の充実・強化が求められる状況となってきている。
特に、2050 年カーボンニュートラルが世界の潮流となる中、我が国においても 2050年カーボンニュートラルの実現が宣言され、2030 年度の新たな温室効果ガス削減目標として、46%削減を目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けることとされた。
その実現に向け、政府全体としては、2021 年 10 月に、「地球温暖化対策計画」、「エネルギー基本計画」、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」等が改定され、パリ協定に基づく我が国の新たな「国が決定する貢献(NDC2)」として、温室効果ガスの排出削減に関する新たな目標が提出された。
加えて、気候変動による影響への適応策を強化するものとして、「気候変動適応計画」が改定された。
建設分野においても取組を一層進める必要があるが、このような状況を踏まえて以下の問に答えよ。

(1)技術者として多面的な観点から3つ課題を抽出し課題の内容を示せ。

(2)最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を複数示せ。

(3)(2)で挙げた解決策をすべて実施したとしても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)(1)~(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

解答骨子作成

ここでは上記であげた『脱炭素・カーボンニュートラル・グリーン』に関する問に対して、それぞれ解答骨子を考えていきましょう!

なお、この解答骨子は、気候変動適応計画国土交通省環境行動計画、国土交通グリーンチャレンジ等を読み、勉強しながら作成した程度のものです。

私もこの分野は疎いので、参考になるかわかりませんが、その前提で一読いただけるとうれしいです。

どちらかといえば、「どうしようもなく困った時にかわす」解答の仕方に近い(要は専門性は低い解答がゼロ点ではない)と自分でも思います。

まず、基本的な解答骨子の作り方は『施策背景』『課題』『解決策』で書いていくんでしたね。

この方針で解答骨子を作成していきます。

解答骨子

施策背景

気候変動の影響による自然災害の激甚化・頻発化が懸念されるなど、気候変動対策の推進は我が国のみならず地球規模での対応が求められる喫緊の課題となっている。

脱炭素社会、気候変動適応社会、自然共生社会、循環型社会を広く包含する持続可能で強靱なグリーン社会の実現に向けて、国内外の動向等を踏まえつつ、国土交通省として取り組むべき課題について、効果的かつ効率的に対応していく必要がある。

その際には、脱炭素化、気候変動への適応、生物多様性の保全、資源循環等の取組について、相互に有機的な連携を図り、社会経済の持続可能性を高めるとともに、快適で豊かなくらしの実現につなげていくことが重要である。

これら背景を踏まえ、国土交通省において令和3年に『国土交通省環境行動計画』及び『国土交通グリーンチャレンジ』を定め、建設・運輸各部門における各種取組を横断的に推進していくこととしている。

(1)3つの課題

『脱炭素・カーボンニュートラル・グリーン』の取組を進める上で重要な観点として、

  1. 2050 年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現
  2. 気候変動適応策の強化
  3. 自然共生社会の形成
  4. 循環型社会の形成

の4つを抽出する。なぜなら、持続可能で強靱なグリーン社会を実現するためにはこれら4つの観点を包含する取組を推進することが重要であるからである。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. 「気候変動緩和策」をどのように具体的に推進するか
  2. 「気候変動適応策」をどのように具体的に推進するか
  3. 「自然共生社会・循環型社会」を形成するための取組をどのように具体的に推進するか

【課題1】国土交通分野においては、わが国のCO2排出の5割を占める民生部門・運輸部門におけるCO2排出対策が大きな課題となっている。この排出量を抑制しカーボンニュートラルを実現するためには、ZEH等住宅施策の推進やEVの活用やカーボンニュートラルポートの取組等の運輸施策の推進を通じて、気候変動緩和策を講じていく必要がある。

【課題2】気候変動の影響による自然災害の激甚化・頻発化への対応として、国土交通省では「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」をとりまとめたところである。気候変動適応策としても『流域治水の推進』や『気候変動の影響による降雨量の増加等を考慮した治水計画の見直し』等の取組について関係省庁とも連携しつつ強力に実施していく必要がある。

【課題3】自然環境が有する多様な機能を活用したグリーンインフラの社会実装を官民連携・分野横断により一層推進する必要がある。また、下水汚泥のエネルギー・資源化、建設リサイクル法の厳密な運用、リサイクルポート施策の推進など、循環資源利用の推進・強化に引き続き取り組む必要がある。

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記2であげた『気候変動適応策』と考えている。

なぜなら、建設分野においては、気候変動による災害の激甚化・頻発化への対応が命に直結する喫緊の課題であると考えられるためである。

解決策としては以下3点が考えられる。

  1. あらゆる関係者により流域全体で行う「流域治水」への転換
  2. 気候変動の影響を反映した治水計画等への見直し
  3. 防災・減災のためのすまい方や土地利用の推進

【解決策1】流域治水の取組は河川だけでなく、流域全体で取り組む治水対策であり、ダムや河道整備に加えて、下水道による内水対策や田んぼダム、利水ダムの事前放流、遊水地、二線堤、排水ポンプ場の整備なども組み合わせた総合的な治水対策である。この取り組みを実施するため、各流域単位で『流域治水プロジェクト』を定め、あらゆる関係者が連携して取り組みを進めているところである。

【解決策2】気候変動により日本の洪水流量の増大が予測されている(1.15倍から1.2倍)。これまでの直轄河川の河川整備計画は既往最大降雨に対応するための今後30年程度で実施すべき治水対策を位置付けたものだったが、これからは気候変動を考慮し対象外力を引き伸ばした降雨に対する治水対策を新たに整備計画に位置付けていく必要がある。

【解決策3】リスクの高い地域からの移転制度の活用や、立地適正化計画に位置付けた防災指針の策定・運用を通じて、人々が安全・安心に暮らせる地域へと変えていく取組である。コンパクト+ネットワークのまちづくりの一環として取り組んでいく必要がある。

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対応策

上記(2)で述べた対策を実施しても残る新たなリスクとしては、『公共事業以外の民間企業が防災・減災事業を実施する際の地域との合意形成・資金調達』と考えている。

官・民あらゆる関係者が連携し、河川区域外も含めた流域全体で治水対策や住まい方を変えていくということは、連携した事業の実施に際し、事業進捗の調整、地域住民の方々と合意形成を行った上での業務遂行などの課題が生じる可能性がある。

公共事業の実施にあたっては、パブリックコメントや環境アセスメントなど様々なプロセスで住民合意を得ることとなるが、民間事業者が実施する防災・減災対策については地域住民等との合意プロセスに定まったものはないと思われる。

また、今、民間企業もESG投資やSDGsの取組を推進しており、その中に防災・減災対策も含まれている。しかし、直接の利益を生むわけではない防災投資に潤沢な資金を回すことのできる民間企業が少ないのが現状の課題であろう。

この課題への対応策としては、

  1. 民間企業が実施する防災・減災事業に対する地域住民との合意形成プロセスのルール作り
  2. 一部自治体等で既に実施されているグリーンボンドなどを通じた防災・減災事業の資金調達手法の普及促進
  3. 民間企業の実施する防災・減災事業と公共事業の実施内容調整や進捗状況調整を行う協議の場を地域に設けること

などが考えられる。

(4)業務遂行にあたっての要件・留意点

『倫理、社会の持続性』の観点からは、以下の要件・留意点があげられる。

なお、技術士倫理綱領の『公衆の利益の優先』『持続可能性の確保』の観点も踏まえて述べることとする。

  • 災害発生時にもレジリエントな地域を構築するため、『エネルギーの地産・地消を目指した脱炭素地域』を目指していく必要性にも留意する必要があると考えている。
  • 住宅や公共建築物への太陽光発電の導入促進に加え、河川や上下水道・工業用水といったあらゆる水エネルギーを中小水力発電として活用した地域社会を目指していくことにより、発災時にも自地域でエネルギーの供給が可能な社会を構築し、デジタル技術を通じて適時・適切な情報提供や避難誘導、避難行動を促すことが可能となるほか、避難所運営等における電力確保も可能となると考えられる。

(参考)技術士倫理綱領

【前文】
 技術士は、科学技術が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して持続可能な社会の実現に貢献する。
 技術士は、その使命を全うするため、技術士としての品位の向上に努め、技術の研鑚に励み、国際的な視野に立ってこの倫理綱領を遵守し、公正・誠実に行動する。

【基本綱領】
(公衆の利益の優先)
 1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。

(持続可能性の確保)
 2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

(有能性の重視)
 3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

(真実性の確保)
 4.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。

(公正かつ誠実な履行)
 5.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。

(秘密の保持)
 6.技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。

(信用の保持)
 7.技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。

(相互の協力)
 8.技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。

(法規の遵守等)
 9.技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。

(継続研鑚)
 10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。

(参考)3義務・2責務

信用失墜行為の禁止、技術士等の秘密保持義務、技術士等の公益確保の責務、技術士の名称表示の場合の義務、技術士の資質向上の責務

解答のポイント

今回は、私の専門が河川なので、なんとか防災・減災『気候変動適応策』に解答を持っていき作成することとなりました。

運輸が専門であればカーボンニュートラルポート(https://www.mlit.go.jp/kowan/content/001448303.pdf)などの『緩和策』で解答しても良いでしょう。

また、環境が専門であれば『生態系やリサイクル』で解答を書いても良いでしょう。

困った時に解答を作成する上では、課題から論理的に自分の得意分野に解答を寄せていって、ストーリーを作って、とりあえずゼロ解答にはしないことが重要と考えています。

私としても、この解答を作成しながら、脱炭素施策について詳しくなれたので非常に勉強になりました。

まとめ

今回は『脱炭素・カーボンニュートラル・グリーン』についてとりあげました。結局、必須科目・専門河川両方に使えるような解答を作成することとなりました。

勉強した内容を踏まえ、とっさの判断で自分の専門に解答を寄せていけるように、政策課題と自身の専門の関わり方について、自分の中で理解を深めておくと良いのではないかと思います。

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