【解答骨子】R4技術士(建設部門)勝手に出題予想(12)〜専門河川Ⅲ『流域治水(省庁間連携・DX・脱炭素)』〜   

2022年5月6日

今回取り上げる出題予想テーマ

これまで過去問分析をしたり、予想したり、勉強資料・勉強法について綴ってきました。

今回は、実際に、出題予想テーマから想定問・解答骨子を作っていきたいと思います。第5弾までは「必須科目」を想定していましたが、今回からは「専門-河川」を想定していきたいと思います。

第六弾として専門-河川で出題可能性が特に高いと個人的に思っている、『流域治水』について作ってみます!

必須科目想定の時は「流域治水とは何か」から比較的全体像を記述していく形をとっていました。

しかし、今回は専門-河川ということで「流域治水」の認識は出題者・採点者も十分理解しているという前提での解答作成を考えていきます。

解答を作ってみて感じましたが、行政目線での専門というより一般的な解答となってしまっているかと思いますが、河川行政に携わる方の参考にはなるのではないかと思います。これにご自身の専門性を踏まえて肉付けしていただくなど応用してもらえると幸いです。

私もまだまだ未熟な技術者ですが、受験者の皆さまの頭の体操の参考にしていただけると幸いです。

なお、必須科目の防災としての出題も想定されるため、勉強される際は、以下記事も合わせてご覧ください↓

【解答骨子】R4技術士(建設部門)勝手に出題予想(7)〜必須『流域治水』〜  | うつ×育児×転職×元官僚×技術士×ダム (ikujiojisan.biz)

(あくまでも私の勉強の仕方の一例という観点で見て下さい。A評価が取れるかは全くわかりませんのでご参考程度にしてください(苦笑))

流域治水(省庁間連携・DX・脱炭素)

今回は『流域治水(省庁間連携・DX・脱炭素)』について、取り上げたいと思います。

このテーマも『必須』『専門-河川』どちらでも出題される可能性が非常に高いテーマだと考えています。

想定問作成

「専門-河川」を想定して問い立てから始めていきたいと思います。

ここではⅢでの出題を想定してみましょう!(Ⅱでの出題は個別施策なので、総合的に問われるものとしてⅢを想定することとします。)

出題は「流域治水」を想定し、解答で「省庁間連携・DX・脱炭素」を深堀する3パターンでの作成を試みます。

こうすることにより「流域治水」での出題だけでなく「DX・脱炭素」に関する切り口の出題に対しても対応できる解答骨子を考えることができるからです。

今、課題への解決手法を考える際、必ずといっても過言ではなく、「DXや脱炭素」の取組は外せないものとなってきていますよね。

技術士試験の事前勉強においても『あらゆる出題がなされても、課題でDX・脱炭素をあげ、その解決手法まで具体例を示しながら解答できるようにしておくこと』が今後数年の技術士試験のトレンドになると踏んでいます。

まずは、調べたりせず、自分自身でどれだけ解答を書けるか試してみましょうね。

問立て

近年、気候変動等の影響により、自然災害が激甚化・頻発化している。この災害から人命・財産を守るため、あらゆる関係者が協働して、「流域治水」の考え方の元、防災・減災対策を総合的に進めていく必要がある。そのためには、外水だけではなく、内水や土砂災害による被害も想定する必要がある。また、河川区域・集水域に加え、氾濫域全体での取り組みが重要となっている。

(1)令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨等における甚大な被害を踏まえ、人的被害や社会被害を最小化するために必要と考えられる対策について、技術者としての立場で多面的な課題を抽出し、分析せよ。

(2)抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対応策について述べよ。

解答骨子作成

ここでは上記であげた『流域治水』に関する問に対して、それぞれ解答骨子を考えていきましょう!

なお、この解答骨子は、一旦調べずに書き上げ、用語などを後から調べて修正した程度のものです。

まず、基本的な解答骨子の作り方は『施策背景』『課題』『解決策』で書いていくんでしたね。

この方針で解答骨子を作成していきます。

解答骨子(パターン1_省庁間連携)

施策背景

令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨等、近年死者も出る自然災害が激甚化・頻発化している。また、気候変動等の影響により、今後さらに洪水の頻度、雨量・流量ともに増大していくことが想定されている。

これらを背景に流域治水関連法が成立し、政府の国土強靱化の取組の一環として、省庁横断で防災・減災が主流となる社会の形成を目指し、流域の全員が協働して流域全体で行う持続可能な治水対策(『流域治水』)を推進しているところである。

(1)多面的な課題の抽出・分析

『流域治水』を進める上で重要な観点として、

  1. あらゆる関係者の連携による流域治水の実践
  2. デジタル・トランスフォーメーション(DX)
  3. 脱炭素・グリーンインフラ

の3つを抽出する。

なぜなら、政府の重要課題として、「国土強靱化」「デジタル田園都市国家構想」「カーボンニュートラル・脱炭素があげられているためである。

  • 国土強靱化については、「防災・減災、国土強靱化のための5か年計画加速化対策」の中で「流域治水」の取組が重要な施策として位置付けられている。
  • 気候変動対策については、令和3年に閣議決定された「気候変動適応計画」「流域治水」や「グリーンインフラ」の取組も位置付けられており、これらは省庁が連携して各種取組を推進することとなった。
  • デジタルについては、令和4年に国土交通省インフラDXアクションプランが策定され、デジタル技術を活用した組織・風土も含めた変革を促す「インフラ分野のデジタルトランスフォーメーション」を推進し、より効果的・効率的な防災・減災対策を推進することが重要となった。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. ハード・ソフト対策における省庁間の連携強化
  2. 災害時の情報発信の高度化に加え、限られた予算・工期内における効果的・効率的な施設の維持管理・更新や新設のためのデジタル技術の活用
  3. 気候変動適応計画に基づくグリーンインフラの整備等、脱炭素の取組の推進

それぞれの課題を分析すると、以下のことが考えられる。

【課題1】省庁間の連携の観点では、省庁横断会議が設けられ各種予算支援メニューや取組の共有は始まったところであるが、各流域単位で所管に関わらない施設の整備順序の調整や省庁横断の予算の流用等による流域全体を見た時の防災・減災対策の優先順位付けが行われていないことが課題

【課題2】河川行政においても、「流域治水ケタ違いDXプロジェクト」を始めとした各種取組が推進されている。その他も新たな技術が日々出てきている状況において、これまで以上にスピード感を持った取組の展開が求められている。具体的には、技術的な確からしさをいかに確保していくのかといった技術認証の手法や、モデル地域で実証されたリーディングプロジェクトの横展開をいかに進めていくかが課題と考えられる。

【課題3】グリーンインフラの整備においては、河川区域だけではなく氾濫域も含めた流域全体の取組が重要である。民間敷地等におけるグリーンインフラの整備に係るインセンティブをどのように付加していくかが課題である。また、脱炭素の取組についても既存ダムの水力発電施設の増強等ダム再生の取組を一層推進するだけでなく、民間施設等への太陽光発電導入やあらゆる水路等を活用した中小水力発電の導入を促進するなど再生可能エネルギーの地産地消に向けた取組へのインセンティブをどのように付与していくかが課題と考えられる。

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記1であげた『省庁間の連携強化』と考えている。

なぜなら、限られた政府予算内において、各省庁が割り振られた予算に応じて執行していくことは、個別最適ではあるかもしれないが、全体最適を考えた際に最も効率的・効果的な整備内容となっているのかは不明であり、十分に検討して予算執行にあたることが最も重要と考えられるためである。

解決策としては以下2点が考えられる。

  1. 各流域内における所管省庁をまたいだ年度内の予算流用を可能とすること
  2. 河川整備計画のおける短期プロジェクト(5年程度)のように、当面の予算において省庁横断で具体的に何を実施するか検討し、流域の治水安全度をどう向上させていくのかを共有した上で事業実施にあたること

【解決策1】現状、各省庁所管の補助金等は、省をまたいだ流用など実施されていないことが実態であると思われる。主要な河川事業や下水道事業、農業用施設整備、林野庁所管の山林整備等は省庁をまたいだ「流域治水整備事業費」として流域単位で計上する予算制度の創設を図るほか、民間の貯留施設整備への補助や自治体独自の補助事業などは流域単位で「流域治水交付金」のような形で一括計上し、さらに国費による補助も創設する。これらにより、流域治水の取組の一層の加速及び他所管・他自治体事業への年度内流用を可能とすることができる制度の創設により予算の繰り越しや不用を可能な限り削減し、行政の縦割りを打破することに繋げ、課題解決を図る。

【解決策2】短期プロジェクトの具体化について、現在の流域治水プロジェクトでは短期・中期・長期で概ね示されているが、特に国土交通省や農林水産省所管以外の事業について、いつやるのかを具体的に示されてはいない状況。流域全体として、自治体事業等も含め、より具体的に整備メニューを検討し、省庁横断した流域単位での予算確保等につなげていくことにより課題解決が期待できる。

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対応策

上記(2)で述べた対策を実施しても残る新たなリスクとしては、世界情勢を踏まえた『資材等物価の上昇や労務単価の上昇による事業執行スピードの低下』と考えている。

令和4年4月現在、ガソリン等のエネルギーの値上げにより、あらゆる物価が上昇している。これは建設業の事業執行にも大きな影響を与えており、予算内における執行可能な事業ボリュームができない恐れがある。労務単価の上昇についても技能労働者を中心に人手不足が続く建設業界においては継続的な課題となってきており、資材等物価上昇と同様の影響が生じかねないと考えられる。

この課題への対応策としては、

  1. 流域の治水安全度の向上にクリティカルな影響を及ぼす事業への国庫債務負担行為の適用促進
  2. 資材のプレハブ化による現場打ち作業の縮減やICT施工等の活用による人的リソースの有効活用、資材調達のトラックの待ち時間をなくすジャストインタイム方式の適用促進

などが考えられる。

解答骨子(パターン2_DX)

施策背景

令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨等、近年死者も出る自然災害が激甚化・頻発化している。また、気候変動等の影響により、今後さらに洪水の頻度、雨量・流量ともに増大していくことが想定されている。

これらを背景に流域治水関連法が成立し、政府の国土強靱化の取組の一環として、省庁横断で防災・減災が主流となる社会の形成を目指し、流域の全員が協働して流域全体で行う持続可能な治水対策(『流域治水』)を推進しているところである。

(1)多面的な課題の抽出・分析

『流域治水』を進める上で重要な観点として、

  1. あらゆる関係者の連携による流域治水の実践
  2. デジタル・トランスフォーメーション(DX)
  3. 脱炭素・グリーンインフラ

の3つを抽出する。

なぜなら、政府の重要課題として、「国土強靱化」「デジタル田園都市国家構想」「カーボンニュートラル・脱炭素があげられているためである。

  • 国土強靱化については、「防災・減災、国土強靱化のための5か年計画加速化対策」の中で「流域治水」の取組が重要な施策として位置付けられている。
  • 気候変動対策については、令和3年に閣議決定された「気候変動適応計画」「流域治水」や「グリーンインフラ」の取組も位置付けられており、これらは省庁が連携して各種取組を推進することとなった。
  • デジタルについては、令和4年に国土交通省インフラDXアクションプランが策定され、デジタル技術を活用した組織・風土も含めた変革を促す「インフラ分野のデジタルトランスフォーメーション」を推進し、より効果的・効率的な防災・減災対策を推進することが重要となった。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. ハード・ソフト対策における、省庁間の連携強化
  2. 災害時の情報発信の高度化に加え、限られた予算・工期内における効果的・効率的な施設の維持管理・更新や新設のためのデジタル技術の活用
  3. 気候変動適応計画に基づくグリーンインフラの整備等、脱炭素の取組の推進

それぞれの課題を分析すると、以下のことが考えられる。

【課題1】省庁間の連携の観点では、省庁横断会議が設けられ各種予算支援メニューや取組の共有は始まったところであるが、各流域単位で所管に関わらない施設の整備順序の調整や省庁横断の予算の流用等による流域全体を見た時の防災・減災対策の優先順位付けが行われていないことが課題

【課題2】河川行政においても「流域治水ケタ違いDXプロジェクト」を始めとした各種取組が推進されている。その他も新たな技術が日々出てきている状況において、これまで以上にスピード感を持った取組の展開が求められている。具体的には、技術的な確からしさをいかに確保していくのかといった技術認証の手法や、モデル地域で実証されたリーディングプロジェクトの横展開をいかに進めていくかが課題と考えられる。

【課題3】グリーンインフラの整備においては、河川区域だけではなく氾濫域も含めた流域全体の取組が重要である。民間敷地等におけるグリーンインフラの整備に係るインセンティブをどのように付加していくかが課題である。また、脱炭素の取組についても既存ダムの水力発電施設の増強等ダム再生の取組を一層推進するだけでなく、民間施設等への太陽光発電導入やあらゆる水路等を活用した中小水力発電の導入を促進するなど再生可能エネルギーの地産地消に向けた取組へのインセンティブをどのように付与していくかが課題と考えられる。

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記2であげた『デジタル技術の活用』と考えている。

なぜなら、令和5年のBIM/CIM原則化、令和6年の建設業への残業規制適用など、今の建設業が抱える働き方改革や担い手不足を解消するためには、インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーションを推進することが最も重要と考えられるためである。

解決策としては以下2点が考えられる。

  1. 技術類型に応じて複数年契約で第三者認証機関を認定し、新技術の現場への導入を促進すること
  2. リーディングプロジェクトで良い結果が得られた場合、当該年度途中からでも設計変更などで対応できる現場を増やすこと

【解決策1】道路事業において実施されているように技術類型に応じた「新技術導入促進機関」を公募し、第三者認証機関として認定し、あらゆる新技術の現場への導入を促進すること

【解決策2】現在、新技術が調達にのるまでにはNETISへの登録が必要で時間・手続きを要するなど、新技術を有する業者も試行疲れを起こしているところである。スタートアップ企業には体力の無い企業も多いため、可能な限り早く多くの現場で導入できるようにする必要がある。そのため、試行した当該年度から導入が可能になるなどのスピード感で進める必要がある。

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対応策

上記(2)で述べた対策を実施しても残る新たなリスクとしては、『新たな技術の早期導入により失敗した場合の会計検査院等への説明責任』と考えている。

前例踏襲主義の行政においては、負のレガシーとして過去の技術を使い続けてしまうことにより、工事・業務執行の効率化の阻害につながることなどが想定される。

新たな分野への挑戦は失敗することもあるかもしれないが、それを教訓により良い技術開発が進むことも期待できる。建設業界のDXを進めるためには行政も新技術を積極的に活用していかなければならないと考えている。

この課題への対応策としては、

  1. 発注段階からチャレンジ工事・業務として位置付け、後年に会計検査院等から結果だけを見た指摘事項をもらうことがないよう、事前に会計検査院と予算執行省庁において合意を図っておくこと
  2. もし、失敗した場合にはその原因(例えば現場特有の課題があったのかなど)の分析・検討を行い、新技術の一層の向上に役立てるよう、行政側と技術開発企業における検証を実施するスキームを確立しておくこと

などが考えられる。

解答骨子(パターン3_脱炭素)

施策背景

令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨等、近年死者も出る自然災害が激甚化・頻発化している。また、気候変動等の影響により、今後さらに洪水の頻度、雨量・流量ともに増大していくことが想定されている。

これらを背景に流域治水関連法が成立し、政府の国土強靱化の取組の一環として、省庁横断で防災・減災が主流となる社会の形成を目指し、流域の全員が協働して流域全体で行う持続可能な治水対策(『流域治水』)を推進しているところである。

(1)多面的な課題の抽出・分析

『流域治水』を進める上で重要な観点として、

  1. あらゆる関係者の連携による流域治水の実践
  2. デジタル・トランスフォーメーション(DX)
  3. 脱炭素・グリーンインフラ

の3つを抽出する。

なぜなら、政府の重要課題として、「国土強靱化」「デジタル田園都市国家構想」「カーボンニュートラル・脱炭素があげられているためである。

  • 国土強靱化については、「防災・減災、国土強靱化のための5か年計画加速化対策」の中で「流域治水」の取組が重要な施策として位置付けられている。
  • 気候変動対策については、令和3年に閣議決定された「気候変動適応計画」「流域治水」や「グリーンインフラ」の取組も位置付けられており、これらは省庁が連携して各種取組を推進することとなった。
  • デジタルについては、令和4年に国土交通省インフラDXアクションプランが策定され、デジタル技術を活用した組織・風土も含めた変革を促す「インフラ分野のデジタルトランスフォーメーション」を推進し、より効果的・効率的な防災・減災対策を推進することが重要となった。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. ハード・ソフト対策における、省庁間の連携強化
  2. 災害時の情報発信の高度化に加え、限られた予算・工期内における効果的・効率的な施設の維持管理・更新や新設のためのデジタル技術の活用
  3. 気候変動適応計画に基づくグリーンインフラの整備等、脱炭素の取組の推進

それぞれの課題を分析すると、以下のことが考えられる。

【課題1】省庁間の連携の観点では、省庁横断会議が設けられ各種予算支援メニューや取組の共有は始まったところであるが、各流域単位で所管に関わらない施設の整備順序の調整や省庁横断の予算の流用等による流域全体を見た時の防災・減災対策の優先順位付けが行われていないことが課題

【課題2】河川行政においても「流域治水ケタ違いDXプロジェクト」を始めとした各種取組が推進されている。その他も新たな技術が日々出てきている状況において、これまで以上にスピード感を持った取組の展開が求められている。具体的には、技術的な確からしさをいかに確保していくのかといった技術認証の手法や、モデル地域で実証されたリーディングプロジェクトの横展開をいかに進めていくかが課題と考えられる。

【課題3】グリーンインフラの整備においては、河川区域だけではなく氾濫域も含めた流域全体の取組が重要である。民間敷地等におけるグリーンインフラの整備に係るインセンティブをどのように付加していくかが課題である。また、脱炭素の取組についても既存ダムの水力発電施設の増強等ダム再生の取組を一層推進するだけでなく、民間施設等への太陽光発電導入やあらゆる水路等を活用した中小水力発電の導入を促進するなど再生可能エネルギーの地産地消に向けた取組へのインセンティブをどのように付与していくかが課題と考えられる。

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記3であげた『脱炭素の取組』と考えている。

令和4年、流域治水の取組にも新たに脱炭素・グリーンインフラの整備も位置付けられたところである。これから2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、流域治水を実施するにあたってもグリーンインフラの考え方は持続可能な社会の実現のために非常に重要な取組である。このため、最重要課題と捉えた。

解決策としては、

  1. 氾濫域全体の土地利用状況や立地適正化計画などを勘案し、田んぼダム等の流出抑制対策の具体化に係る費用を優先的に支援していくこと
  2. エネルギーの地産地消に着目し、まだ検討の進んでいない上下水道、工業用水施設における中小水力発電ポテンシャルの検討・事業採算性の検討を進めること

などがあげられる。

【解決策1】田んぼダム等流出抑制対策について、既に積極的に取り組まれている自治体もある。その地元との合意形成過程も含めた事例を全国に横展開し、実現可能な箇所に対して流出抑制対策に係る費用を優先的に支援していくことが重要と考えられる。

【解決策2】中小水力発電に係る水利権申請などの手続きは既に簡素化しているところであり、河川や農業水利施設などでは一部導入も進んでいるところ。しかし、上下水道、工業用水施設等における中小水力発電のポテンシャルについては環境省のREPOSを見ても公にはなっていない。あらゆる水資源を有効活用し、これからの情報爆発社会における電力需要を極力地域で賄い、地域の災害等に対する強靱性を高めていくことが重要と考えられる。

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対応策

上記(2)で述べた対策を実施しても残る新たなリスクとしては、『水害・地震等大規模災害発災時に想定される効果の事前把握手法及び事後検証手法の具体化』と考えている。

治水経済調査マニュアル(案)のように、これまでの大規模公共事業に対する費用対効果分析マニュアルは充実しているところであるが、省庁間・官民連携した流域・氾濫域全体を含めた事業に対する費用対効果を算出するマニュアルはまだ無い。また、事後検証においても流出抑制対策について氾濫域全体としてどれだけの治水効果があったのか、や民間事業含めた再生可能エネルギーの地産地消がどの程度行われたのかを定量的に把握する手法も具体化されていない現状にある。

公共事業である限り、世間一般への説明責任を果たす必要があるため、これらの取組は重要であると考えられる。

この課題への対応策としては、

  1. 具体的に氾濫域全体での流出抑制対策等取組の進んでいる流域を例に、モデル流域における費用対効果の算出を所管省庁や民間代表者・学識者で構成される委員会等の会議を通じて実際に検証を試み、その例を踏まえた全国への横展開を図ること
  2. もし氾濫域全体での電源喪失となった場合のリスクの定量化を図るとともに、水力発電等再生可能エネルギーによりエネルギーの地産地消が図られる効果の定量化を行うことができるよう、各流域において発電ポテンシャルや事業採算性も含めた検討を進めること

などが考えられる。

解答のポイント

解答を作成する上では、1つの観点だけではなく、現在の主要な政策課題(官邸HPに載っているレベル)である、国土強靱化(流域治水)や脱炭素(カーボンニュートラル)、デジタルなどの動きも踏まえたものとすることが、採点者側からしても採点しやすいのではないかなと考えています。

実際に解答骨子を作ってみると抽象的な表現も多い状態ですが、ここから文量に応じて具体施策を盛り込みボリューム調整をできるように頭の体操をしておくと準備としては良いと思います。

まとめ

今回は『流域治水』についてとりあげました。

また、解答作成にあたっては、「省庁間連携」「DX」「脱炭素」の3つの観点をそれぞれ抽出して、解答骨子を作成してみました。

やはり、得意・不得意分野があり、それぞれを全て綺麗にまとめることの難しさを感じたところではありますが、当日、どのような切り口で出題されても、それなりに解答できるよう準備しておくことが重要なテーマを抽出したつもりです。本番では、問題文から出題者が解答してもらいたい方向性を感じ取り、連携やDX、脱炭素といった解答につなげられるようにしてもらえると、焦らずに記述できるのではないかと感じています。

皆さまの少しでもご参考になれば幸いです。

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