【解答骨子】R4技術士(建設部門)勝手に出題予想(11)〜必須『戦略的メンテナンス』〜  

2022年4月2日

今回取り上げる出題予想テーマ

これまで過去問分析をしたり、予想したり、勉強資料・勉強法について綴ってきました。

今回は、実際に、出題予想テーマから想定問・解答骨子を作っていきたいと思います。

第五弾として出題可能性が特に高いと個人的に思っている、『戦略的メンテナンス』について作ってみますね!

私もまだまだ未熟な技術者ですが、受験者の皆さまの頭の体操の参考にしていただけると幸いです。

(あくまでも私の勉強の仕方の一例という観点で見て下さい。A評価が取れるかは全くわかりませんのでご参考程度にしてください(苦笑))

戦略的メンテナンス

令和4年に笹子トンネル事故から10年の節目を迎える『戦略的メンテナンス』について、取り上げたいと思います。このテーマも『必須』で出題される可能性が高いテーマだと考えています。ただ、既に過去問で出題されており、新たな問立ても難しいので、出題されるとしたらどのようになるものか、悩ましいところですね。

想定問作成

必須科目を想定して問い立てから始めていきたいと思います。

まずは、調べたりせず、自分自身でどれだけ解答を書けるか試してみましょうね。

問立て

令和4年は笹子トンネル事故から10年の節目を迎える年であり、インフラの老朽化対策・戦略的なメンテナンスの推進に関して様々な取組強化が図られてきた。
国だけではなく自治体管理も含めると大量のインフラの老朽化の進展が見込まれる中、点検や診断についてはこの10年間で大幅に進んだ一方、予防保全の考え方を踏まえた老朽化対策の実施にあたっては予算面・技術面などの課題により進んでいない現状にある。
このような状況を踏まえて以下の問に答えよ。

(1)技術者として多面的な観点から3つ課題を抽出し課題の内容を示せ。

(2)最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を複数示せ。

(3)(2)で挙げた解決策をすべて実施したとしても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)(1)~(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

解答骨子作成

ここでは上記の問に対して、それぞれ解答骨子を考えていきましょう!

なお、この解答骨子は、一旦調べずに書き上げ、用語などを後から調べて修正した程度のものです。

まず、基本的な解答骨子の作り方は『施策背景』『課題』『解決策』で書いていくんでしたね。

この方針で解答骨子を作成していきます。

解答骨子

施策背景

インフラメンテナンスについては、笹子トンネル事故を踏まえ、平成25年を「インフラメンテナンス元年」と位置づけ、取組を強化・推進してきたところである。

しかし、国や自治体の管理する道路や河川等公共インフラの老朽化の進展は待ったなしの状況であり、事後保全型から予防保全型へ移行するよう取り組んできているが、間に合っていない現状である。

また、国の社会資本メンテナンス戦略小委員会においては、笹子トンネル事故から10年の節目となる令和4年に、これまでの取組を総括するとともに、新技術の活用や民間活力など新たな取組も踏まえて、とりまとめを行うこととしている。

(1)3つの課題

『戦略的メンテナンス』を進める上で重要な観点として、

  1. 人口減少社会、少子高齢化社会におけるインフラのあり方
  2. 点検・診断・更新に関する技術開発の進展
  3. ESG投資に代表されるようなインフラの維持管理・更新に関する民間資金の活用

の3つを抽出する。

なぜなら、「日本社会の変化に伴うインフラ利用状況の変化」「より効果的・効率的なインフラメンテナンスを実現する新技術の活用」「ESG投資に代表されるような民間資金の活用」により、今後も不足が想定されるインフラメンテナンスに対する予算・人的リソースを補うことが重要であるからである。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. 施設の利用状況や将来の利用形態の推定による既存施設の『統廃合も含めた選択と集中』
  2. AIやドローン、レーザー打音等新技術の導入による『維持管理の省人化・効率化・低コスト化』
  3. 社会課題が多様化する現代における、行政による公共施設の維持管理・更新に要する『予算確保の困難さ』

【課題1】例えば、令和4年に公表された「道路橋の集約・撤去事例集」(国土交通省道路局)においても指摘されているように、今後、自治体管理施設等を中心に「統廃合も含めた選択と集中」をせざるを得ない状況にある。どの施設をどんな理由で残すのか、どう地元合意を図っていくのか、例えば道路橋から人道橋に機能を下げて橋梁を維持するのか、など地域の実情に応じた様々な検討事項があり、このことが重要な課題となっている。

【課題2】維持管理における新技術の活用については、令和3年に「新技術導入の手引き」(国土交通省総合政策局)が出されるなど、施設の維持管理の省人化・効率化・低コスト化について取組が進められている。PRISM予算を使った分野横断的な基準類の整備に加え、各分野においても技術開発・試行が進んでいるが、行政側による技術認証が追い付いていない課題がある。

【課題3】多くの施設を維持管理する自治体への集中的な財政支援策として、道路メンテナンス事業費補助などの交付金事業の個別補助事業化が各分野で進んでいるところである。しかし、国費・自治体単費も十分とは言えず、施設の集約・撤去は避けられない状況にある。今後も日本全体でみれば社会保障費の増額は避けられない状況であり、政府の公共事業予算の大幅な増加は見込まれないと想定されるため、いかにして予算を確保するかも大きな課題である。

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記1であげた『既存施設の選択と集中』と考えている。

なぜなら、持続可能な社会を構築するためには、予算の一時的な増額での対応や新技術に頼った効率化だけでは効果が限定的であると思われ急速な施設の老朽化の進展に対策が追い付かない現状にあるからである。

これらを背景に、維持管理する施設を絞り込むという観点で、全国的に統廃合も含めた既存施設の選択と集中の実施が避けられない状況にあると考えられる。

解決策としては以下3点が考えられる。

  1. 施設利用状況を定量的に評価し、利用を廃止する橋梁等を選定し、住民合意を図っていくこと
  2. 重要物流道路の整備等による災害時のインフラの代替性(リダンダンシー)の確保と合わせた既存施設の統廃合
  3. 将来の都市のあり方(コンパクト+ネットワーク)を踏まえた施設利用の推計の実施及び将来も利用状況が稠密な重要施設に対する老朽化対策等への集中投資

【解決策1】人流等の可視化による施設利用の現状を可視化する等定量的に評価し、その結果を住民に丁寧に説明し、利用を廃止する橋梁等を選定し、維持管理をする施設を減らしていくこと。

【解決策2】重要物流道路の整備等、災害時におけるリダンダンシーを確保した上で、平常時のう回路としても通行の安全性の高い道路等を整備することにより、これまで利用している既存施設の廃止等について住民に対して丁寧に説明していくこと。

【解決策3】将来のコンパクト+ネットワークの考え方を踏まえた土地利用の状況を可視化し、周辺の整備と合わせた将来的な公共施設の統廃合について、時期を明示した上で、地域との合意形成を進めていくこと。

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対応策

上記(2)で述べた対策を実施しても残る新たなリスクとしては、『施設の統廃合により不便を被る地域における行政への不信感』と考えている。

この課題への対応策としては、

  1. 直接顔を合わせて行う地域住民への説明会による丁寧な地域との合意形成(丁寧な説明)
  2. 代替手段・う回路等の施設の更新に合わせた機能アップによる地域の安全性の向上への理解(メリットの説明)
  3. 市町村の財政状況や人的リソースの低減状況等も理解してもらうような丁寧な説明(自治体の現状説明)

などが考えられる。

(4)業務遂行にあたっての要点・留意点

『倫理、社会の持続性』の観点からは、以下の要点・留意点があげられる。

なお、技術士倫理綱領の『公衆の利益の優先』『持続可能性の確保』の観点も踏まえて述べることとする。

  • 公共施設の統廃合においては、迂回路等の新規整備も含まれると考えている。その際、脱炭素・カーボンニュートラルの必要性を踏まえ、大気中のCO2をコンクリート内に固定する技術等を積極的に活用するなどの観点が重要と考えられる。
  • また、新規整備や更新を実施する際には、太陽光発電の導入等再生可能エネルギーの導入促進も考慮する必要があると考えられる。

(参考)技術士倫理綱領

【前文】
 技術士は、科学技術が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して持続可能な社会の実現に貢献する。
 技術士は、その使命を全うするため、技術士としての品位の向上に努め、技術の研鑚に励み、国際的な視野に立ってこの倫理綱領を遵守し、公正・誠実に行動する。

【基本綱領】
(公衆の利益の優先)
 1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。

(持続可能性の確保)
 2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

(有能性の重視)
 3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

(真実性の確保)
 4.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。

(公正かつ誠実な履行)
 5.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。

(秘密の保持)
 6.技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。

(信用の保持)
 7.技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。

(相互の協力)
 8.技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。

(法規の遵守等)
 9.技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。

(継続研鑚)
 10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。

(参考)3義務・2責務

信用失墜行為の禁止、技術士等の秘密保持義務、技術士等の公益確保の責務、技術士の名称表示の場合の義務、技術士の資質向上の責務

解答のポイント

つい先日公表された「道路橋の集約・撤去事例集」にもあるように、インフラメンテナンスを考えていく際、既存施設すべてを維持管理していくことを前提とすることは不可能であり、どの施設・機能を維持していくのかを考えていくことが重要だと考えています。

今回の解答骨子は、その思いで作成いたしました。

戦略メンテナンスは笹子トンネル事故を踏まえて加速した取組ですから、その原点にも触れつつ、10年の節目として新技術の活用や新たな予算制度などの内容もしっかり知識として勉強しておくことが必要と思われます。

また社会の持続性の観点では、脱炭素(カーボンニュートラルの動きも踏まえたものを例示としてあげました。

まとめ

今回は『戦略的メンテナンス』についてとりあげました。

樋門等河川管理施設や陸閘等海岸保全施設の統廃合や自動化・遠隔化も話題としてはありますが、戦略的メンテナンスといえば道路・橋梁の色合いの強い施策なので、今回は道路橋を念頭に解答骨子を作成しました。

私の専門外の分野ではございますが、その前提で一読いただけると幸いです。

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