これから下水道を学ぶ人にオススメ!『トコトンやさしい 下水道の本』を読んで

2022年5月16日

新しい分野を学ぶのは楽しい

私の専門は河川なのですが、下水道も勉強してみたいと思っているところです。(雨水だけでなく汚水も勉強してみたい)

将来的には、技術士 上下水道部門 下水道の取得も目指したい、専門性の幅を広げていきたいと思っています。

そこで、まったくの下水道初心者ですが、勉強始めに本書を手にとってみたところ、結構面白かったので、ここでご紹介します。

まずは歴史から学ぶ

本書では、まずは下水道の歴史(国内外)を知ることができます。

江戸が綺麗な街だったことくらいしか知らず、下水道がどのような仕組みで貢献してきたのか、整備が進められてきたのか、何も知らなかったので、非常に勉強になりました。

世界的にも、近代下水道整備は公共事業の中でも後回しにされがちだったが、コレラ等感染症対策として一気に都市において進められていったことなど、基礎的なことですが私にとっては新鮮な情報でした。

平時から必要性は訴えられてはいるものの、いざ災害が起きてみないと大きくは動かない、社会資本の事前投資にはなかなか踏み切ることができない構造は『今』とあまり変わらないんだなぁとも感じました。

また、昨今、新型コロナ感染症が世界的に流行しパンデミックが起こり、さまざまな社会変革が起きている真っ只中ではありますが、やはりこのような災害で被害を受ける人を少しでも減らしていきたいと思うと、下水道整備もそこに繋がる重要なインフラであることを改めて思いました。

下水道のしくみについて

河川との連携の観点での雨水処理のことを少しかじったくらいの知識しかなかったのですが、『浸水』『環境』『衛生的な暮らし』という大きな3つの目的について、基本的なことを学ぶことができました。

また合流式、分流式についてもわかりやすく解説があったので良い復習になりました。

全体として、絵がふんだんに使われているので非常にイメージしやすく、読み進めやすいなぁと感じました。

下水をはこぶ

このあたりから、少し専門分野っぽくなってきます。私がハッとさせられたことは、マスの設置理由やマンホールを設置する理由でした。

これまで街歩きなどをしていたり、マンホールカード集めをしたりしていた中で、考えたこともなかった気付きがありましたね。

ちなみに私たちがイメージする『マンホール』とは『蓋』のことを指していて、本当のマンホールはその下にある構造物であることも恥ずかしながら今回気付きました。

その他、管渠の取り付け方の基本、更生工法、流量計算の基本などが網羅的に記述されており、わかりやすいです!

この章の後半部分は一読ではなかなか理解し切れない部分もあるので、二、三回読むと良いのではないかなぁと感じました。

きれいな水にする

汚水処理について、私が一番勉強したかった部分です。

本書では処理施設の全体概要から、処理方法の詳細まで紹介されていて、なかなか初学者には読み応えのある章だと思います。

高校生以来、好気性や嫌気性という言葉を見ました。まじめに生物をやっておけばよかったかも、大学でも衛生工学をしっかり勉強しておけば良かったと今更ながら思いましたが、ここから改めて勉強するのも楽しいなと感じながら読み進めました。

内容としては、下水処理場の仕組み、沈殿池・水処理方法、標準活性汚泥法、オキシデーションディッチ法、生物膜法、高度処理、汚泥処理といった基本的事項が記されています。

本書は、全体像を詳しすぎずに初学者向けに書いていただけているのがありがたいですね。

微生物を活用して、エアレーションなどを調節しながら汚水を処理しているから、今の衛生的な暮らしがあると思うと、日々の暮らしの中でも水を見る視点が変わってきました。

これまでは洪水ばかりに注目して生きてきましたが、日常の汚水排水も最終的には処理されて公共水域に排出されるので、水に関わるものとして勉強しておかなければならない分野だと改めて認識しました!

下水道の課題

あげられている課題は河川でもよく言われていることだなと感じました。

具体的には、浸水被害軽減策(ハード・ソフト)、アセットマネジメント、地震対策、水質改善などはイメージしやすい課題だなと思い読み進めることができました。

下水道特有の課題としては、合流式下水道の改善、汚泥再利用、下水熱や小水力等有効活用などがあげられています。

私が特に興味を持ったのが、『下水熱や小水量、リン、下水施設空間の有効活用』の部分でした。

昨今の脱炭素施策の中でも注目されている下水道の再生可能エネルギーとしての活用については、より詳しく勉強してみたいと思いました。これから非常に将来性のある分野だと個人的に思っていますし、ニーズがあるからこそ新たな技術開発もますます進んでいく分野かなと感じています。

コロナの流行もあり、あらゆる社会変動が起きた中で、下水道行政がどのように変わっていくのか。

PFIなど経営的な観点もありますが、私としては再生可能エネルギー供給源としても重要な位置付けとなっていくだろう、下水道施設の維持管理・運営が持続可能な状態となり、我々の日常生活を引き続き支えてくれることを期待しています!

下水道四方山話

本章では、私が知りたかった、下水道料金の内訳の考え方、マイクロ水力発電についても触れられており、非常に有益でした。

その他、推進工法や耐震設計、スワール分水槽、ボルテックスバルブ、ドロップシャフトなども記されています。現在、これら技術がどのように導入されているのか、導入が進んでいるのかいないのか、新たな技術が開発・導入されているのか、など興味をそそる内容でした。

いつ技術士(下水道)に届くかな

将来的に技術士 上下水道部門(下水道)を目指すには、まだまだ学ぶべきことがたくさんあるなと、勉強し始めて思ったところです。

今の会社には、河川の技術士も非常に少ないですが、下水道も少ないので、一層目指していきたいと前向きに思っています。まずは、維持管理について知識を入れるために、下水道3種を勉強してみようかなとも思いました。その後、実務経験もできたら技術士を受けてみるという感じでしょうか。

できたら来年度、一度、技術士 下水道にチャレンジしたいです!

下水道はまだまだ素人ですが、これからもいろいろな書物や現場で学んだことがあれば発信していきたいと思います!

【R5年度 上下水道関連記事はこちら↓】
技術士(上下水道部門)ゼロからチャレンジ(2) | うつ×育児×転職×元官僚×技術士×ダム (ikujiojisan.biz)