【解答骨子】R4技術士(建設部門)勝手に出題予想(13)〜専門河川Ⅲ『DX(流域治水ケタ違いDXプロジェクトなど)』~

2022年5月14日

今回取り上げる出題予想テーマ

これまで過去問分析をしたり、予想したり、勉強資料・勉強法について綴ってきました。

今回は、実際に、出題予想テーマから想定問・解答骨子を作っていきたいと思います。

今回は「専門-河川」を想定していきたいと思います。

第七弾として専門-河川で出題可能性が特に高いと個人的に思っている、『DX(流域治水ケタ違いDXプロジェクトなど)』について作ってみます!

河川におけるDXの取組に絞った設問も想定されることから、少し深堀した解答ができるように準備しておきましょう!

私もまだまだ未熟な技術者ですが、受験者の皆さまの頭の体操の参考にしていただけると幸いです。

(あくまでも私の勉強の仕方の一例という観点で見て下さい。A評価が取れるかは全くわかりませんのでご参考程度にしてください(苦笑))

DX(流域治水ケタ違いDXプロジェクト)

今回は『DX(流域治水ケタ違いDXプロジェクト)』について、取り上げたいと思います。

このテーマは、『専門-河川』で出題される可能性が非常に高いテーマだと考えています。

想定問作成

「専門-河川」を想定して問い立てから始めていきたいと思います。

今回取り上げる河川のDXについては最近始まったばかりの施策でもあることから、専門ー河川Ⅲでの出題を想定して、考えていきたいと思います。

まずは、調べたりせず、自分自身でどれだけ解答を書けるか試してみましょうね。

問立て

国土交通省においてはインフラ分野のDXアクションプランを定めるなど、国土交通分野全体としてDXを推進しているところ。水防災分野でも、一層の生産性向上、働き方改革や将来の担い手不足等へ対応するため、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が求められている。

(1)水防災分野でのDXの取組を推進していく上での課題を、水防災施設の有する特性を踏まえて、技術者としての多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

解答骨子作成

ここでは上記であげた『河川のDX』に関する問に対して、それぞれ解答骨子を考えていきましょう!

なお、この解答骨子は、一旦調べずに書き上げ、用語などを後から調べて修正した程度のものです。

まず、基本的な解答骨子の作り方は『施策背景』『課題』『解決策』で書いていくんでしたね。

この方針で解答骨子を作成していきます。

解答骨子

施策背景

インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)については、令和4年に国土交通省インフラDXアクションプランが策定されたところである。これにより、省全体の取組として、デジタル技術を活用した組織・風土も含め変革を促す「インフラ分野のDX」を推進し、より効果的・効率的な防災・減災対策を推進するうことが重要となっている。

また、近年の自然災害をみると、令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨等、死者も出る自然災害が激甚化・頻発化している。さらに、気候変動等の影響により、今後さらに洪水の頻度、雨量・流量ともに増大していくことが想定されている。これらを背景に流域治水関連法が成立し、政府の国土強靱化の取組の一環として、省庁横断で防災・減災が主流となる社会の形成を目指し、流域の全員が協働して流域全体で行う持続可能な治水対策(『流域治水』)を推進している。

これらを踏まえ、水管理・国土保全局を中心に、令和4年3月に「流域治水ケタ違いDXプロジェクト」が立ち上げられ、各取組が推進され始めたところである。

(1)水防災施設の有する特性を踏まえた多面的な課題の抽出・分析

河川におけるDXを進める上で水防災施設の有する特性を踏まえた重要な観点として、

  1. 自然災害発生時に地域の人的・物的被害に直結する重要施設であること
  2. 浸水状況の把握・周知などリアルタイムでの正確な情報提供が求められること
  3. 最新のデジタル技術を活用したとしても、要配慮者等に対しても適切に事前のリスク情報を伝達し、早期避難を促すようにできること

の3つを抽出する。

抽出した理由としては、

  • ダムや水門・排水機場等の水防災施設は、水災害発生時に適切な運用がなされなかった場合、地域への被害が甚大となり、浸水時の非常用電源の適切な確保、早期復旧を可能とする構造とする等リダンダンシーを確保する必要があるため
  • 住民に早期避難、垂直避難など適切な避難行動を促すためには、リアルタイムで危機感が伝わる正確な浸水状況等の情報提供を行うことが求められるため
  • 要配慮者については避難に時間を要するほか、避難行動に対して介助が必要となるなど、発災時に被害を受けやすいため

である。

上記であげた観点に応じた課題としては、以下3つが考えられる。

  1. 基本的に排水機場等の機械設備は現地に合わせた一品生産であり、万が一の被災時の早期復旧等が困難であり、コストもかかること
  2. リアルタイムで危機感が適切に伝わる3D都市モデルの活用などによる技術開発が必要であること
  3. 新たなデジタル技術を活用した情報提供に完全に移行すると、高齢者や要配慮者等災害弱者に対し、リスク情報が適切に伝わらない恐れがあること

それぞれの課題を分析すると、以下のことが考えられる。

【課題1】排水機場等の治水上重要な施設を中心に、リダンダンシーが確保しやすく、かつ、技術的に維持管理も比較的容易で、低コストな機械設備に早急に切り替えていくことが課題

【課題2】代表的な例として「川の防災情報」では、マルチモニタ化や危機管理型水位計のデータも公開されるなど改良が進められているところではあるが、堤内地の企業・家屋等の浸水状況把握、水害保険の早期算定などをより正確かつ迅速に実施するための技術開発・現場実装が課題

【課題3】高齢者や要配慮者等災害弱者・情報弱者に対しても適時・適切にリスク情報が伝わるよう、テレビ等既存のマスメディアによる、より詳細なリスク情報の提供が課題

(2)最も重要な課題と解決策

最重要課題は、上記1であげた『排水機場等のリダンダンシーの確保、整備・維持コストの低価格化』と考えている。

なぜなら、他の2つのソフト対策の課題と比べ、内水も含めた発生頻度の高い水害から発生頻度の低い水害まで、被害を物理的に確実に軽減できる対策と考えられるためである。

解決策としては、排水機場設備のマスプロダクツ化の観点から以下3点が考えられる。

  1. リダンダンシー確保の観点から、自動車の機械設備をポンプ等排水機場設備に転用できるようにして汎用な設備へ代替する
  2. リダンダンシー確保の観点から、応急処置時に即座に調達できる機材の転用を検討する
  3. 低コスト化の観点から、全国にある排水機場の規模に応じた設備の統一規格化を図り、機械設備のリプレイスのタイミングに合わせて合理的な機械設備への更新を進める

(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策

【波及効果】波及効果としては、国や自治体などの各管理者の河川構造物全体で排水機場設備のマスプロダクツ化が進むことにより、応急復旧やリプレイス時の調達が容易になるとともに低コストでの対応が期待できることが考えられる。さらに、国土交通省だけではなく農林水産省所管の排水機場や上下水道施設のポンプ等へも波及させることで、より一層の統一規格の機械市場の拡大による低コスト化、リダンダンシーの確保が実現するものと考えられる。

【懸念事項】懸念事項としては、新たな技術が日々出てきている状況において、どの時点で、どの技術・製品を導入していけば良いのかを検討する意思決定プロセスが考えられる。

【懸念事項への対応策】対応策としては、アジャイル開発などが一般的になってきており、あらゆる要素技術の開発スピードが加速している現状においては、

  1. ある時点での技術の公募・有識者による審査など技術認証の手法の導入
  2. モデル施設で実証されたリーディングプロジェクトの横展開を積極的に展開するための予算面の優遇措置やマニュアル・基準類の早期策定

などが考えられる。

解答のポイント

今回解答を作成する上で改めて考えさせられたことは、『技術士試験で問われる河川のDXとはなんなのか?』ということでした。

『占用許可の電子化』などももちろんDXの取り組みとして位置付けられており重要だとは思いましたが、『河川の技術的な部分』で採点者に訴えられる取組かというと、単なる電子化(デジタイゼーション)でありトランスフォーメーションと言うには物足りないかなと考えました。

また、荒川下流で始まった3D管内図の取組はまさにDXの取組に繋がるものと思いましたが、どのように活用がなされるのか、まだ行政内でも不透明な中とりあえず走っている感じを受けたので、記述しづらいなと思い今回は触れていません。

地域との合意形成をネタに解答ラインを作るのであれば、九州地方整備局で取組が始まったゲームエンジン・VRを用いた合意形成を取り上げることも良いかと思います。

AIの活用(河川情報センターで取り組まれているSIP二期のAIを活用した避難指示等自治体の判断を補助する技術や、洪水予測の高度化などがあると思われます。)なども考えられましたが、正直私が不勉強でよくわからない取組なので今回は避けました。これからは河川屋であれ、AIなどの基本的な部分は理解しておかないといけないなと反省したところです。

以上のように色々考えたところ、今回は、排水機場のマスプロダクツ化を解答の軸にしようと思い、少し勉強して書きました。機械屋ではないので、詳しいエンジンの仕様などには言及できませんが、河川屋として最低限取組の概要やマスプロダクツ化する効果などは整理・記述できるように準備しておくと心強いかなと感じました。

まとめ

今回は『河川のDX』についてとりあげました。

DXとは、単なるデジタル化だけではなく、変革を伴うものであるという認識で、解答骨子を作成したつもりです。

作成してみて、課題と解決策はDXアクションプランなどを調べておけばしっかり記載できますが、『どのように懸念事項とそのの対応策を書くか』が非常に難しい分野だなと感じました。

DXは、これからも行政だけでなく、民間の取組の打ち出しも盛んに行われていく分野ですし、成長分野でもあると思うので、しっかり時代に乗り遅れないようにしたいですね。

皆さまの少しでもご参考になれば幸いです。

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