【私見】『管理瑕疵責任』問えるのか?明治用水頭首工漏水問題と笹子トンネル事故

2022年6月5日

あの笹子トンネル事故から10年・・・

今年はあの笹子トンネル事故から10年が経つ節目の年です。

その後も毎年のように公共施設の老朽化による損傷が発生し、生活への影響が出始めている現状に危機感を抱いている方も多いでしょう。

ここで、改めて、笹子トンネル事故について振り返ると、

笹子トンネル天井板落下事故(ささごトンネルてんじょうばんらっかじこ)は、2012年平成24年)12月2日山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで天井板のコンクリート板が約130メートル[1] の区間にわたって落下し、走行中の車複数台が巻き込まれて9名が死亡した事故である。
「笹子トンネル天井板落下事故」の呼称は国土交通省[2] やトンネルを管理する中日本高速道路(NEXCO中日本)[3] が用いている呼び名だが、報道機関などでは、笹子トンネル事故[4]笹子トンネル崩落事故[5]笹子トンネル天井板崩落事故[6]などの名でも報じられている。
日本の高速道路上での事故としては、1979年に静岡県東名高速道路で発生した日本坂トンネル火災事故や、2012年4月29日に群馬県関越自動車道で発生した関越自動車道高速バス居眠り運転事故などを死亡者数で上回り、死亡者数が史上最多の事故となった。

笹子トンネル天井板落下事故 – Wikipedia

とのことでした。

本当に悲しい事故で、今後あってはならないことだと思っています。

特に人命に関わる事故・第三者被害は防がなければならないでしょう。これからますます施設管理者による管理の重要性は増してくると思っています。

では、笹子トンネル事故の責任は?裁判はどうなった?

ここでは、笹子トンネル事故に関する裁判について、過去の報道を調べてみました。

すると、民事では会社の過失が認められた一方、刑事では不起訴となったとのこと。

それぞれ報道からみていきましょう。

民事

2012年12月に起きた中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故で、トンネルを管理する中日本高速道路(名古屋市)と点検業務を担当した子会社に4億4千万円余りの賠償を命じた昨年12月の一審・横浜地裁判決に対して、中日本高速道路は5日、両社とも控訴しないと明らかにした。
遺族側も控訴しないとしており、点検に過失があったと認定した判決が確定。原告となった遺族は「この判決が判例になり再発防止のきっかけになる」と語った。
中日本高速道路は「事故以前における点検維持管理体制への指摘を真摯に受け止め、遺族の気持ちにあらためてしっかり向き合わなければならないと考えた」とのコメントを公表した。
昨年12月22日の横浜地裁判決は、天井板のつり金具を固定するトンネル最頂部のアンカーボルトが経年劣化で天井板の重さを支えられなくなり、脱落したのが事故原因だったと指摘。「12年9月の点検で、双眼鏡による目視だけという方法を採用した過失があった」と判断していた。同社は「目視で異常があった時に打音検査をすれば十分」と主張したが、判決は「目視以外の検査をし、事故後の緊急点検で見つかった不具合を発見していれば崩落の可能性は予測できた」として退けていた。
事故は12年12月2日、笹子トンネルの天井板が崩落し、9人が死亡。うち5人の遺族12人が計約9億1300万円の損害賠償を求め提訴した。これとは別に、同じ遺族は負傷者とともに中日本高速の当時の社長らに賠償を求めた訴訟も起こしている。山梨県警は業務上過失致死傷容疑で捜査を続けている。〔共同〕

中日本高速が控訴せず 笹子トンネル訴訟、判決確定: 日本経済新聞 (nikkei.com)

刑事

平成24年に9人が死亡した中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故で、うち4人の遺族が中日本高速道路(名古屋市)の当時の役員らに損害賠償を求めた訴訟は、賠償責任を認めず遺族敗訴とした2審判決が確定した。
最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)が5月30日付で、遺族の上告を退ける決定をした。
訴訟は、事故前の点検で設備の劣化を見抜けなかったことについて、役員個人が責任を負うかが争われた。
1審横浜地裁判決は28年2月、役員は点検の詳しい手順を知らず、認識すべき立場でもなかったと指摘。「事故は予測できず、必要な指示を怠った過失もなかった」と結論付け、請求を棄却した。
28年10月の2審東京高裁判決も支持した。 遺族が中日本高速と子会社を相手取った別の訴訟では、横浜地裁が会社側の過失を認め、計約4億4千万円の支払いを命じた判決が確定している。

笹子トンネル事故、役員の責任認めず 最高裁で遺族敗訴確定 – 産経ニュース (sankei.com)

今回の明治用水頭首工漏水問題で考えてみる

令和4年6月2日、原因等を究明し対策を講じるために有識者委員会が立ち上がったところです。第1回検討委員会(6月2日):東海農政局 (maff.go.jp)

まだ、はっきりとした原因は定かではないですが、報道によると

『経年的な変化を無視するわけにはいかない』

という石黒委員長の発言も出ています。老朽化が原因の可能性 愛知大規模漏水で―東海農政局検討委:時事ドットコム (jiji.com)

建設から60年を超えた『明治用水頭首工の老朽化』が原因の可能性はありそうです。

老朽化により被害が生じた場合、誰の責任か?

毎年、河川を横断する許可工作物(橋梁、堰など)は、許可工作物点検として、施設の状態を点検しています。

『普段の施設管理者による維持管理・運営に加え、この許可工作物点検も実際に機能していたのか』

が争点になりそうです。

運用中施設の地盤内構造物の老朽化による損傷を、技術的にいかに把握するのか、といった課題ももちろん出てくるでしょう。

外からわからない部分(水中、地中)の劣化状況を把握することは本当に難しい問題だと思います。非破壊検査のような技術が今後より求められていくのではないかと感じました。

明治用水頭首工の管理者責任は?管理瑕疵が問われるのか?

私は法律屋ではなく詳しくないので、あくまでも個人的な感覚で申し上げることになります。

笹子トンネル事故の例を踏まえて考えると、

『施設管理者の代表や担当者など個人に対する刑事責任は問えない』

ということだと思いました。

一方、笹子トンネル事故の民事では、施設管理者と点検事業者に対して賠償を命じています。

この例を踏まえると、今回の明治用水頭首工漏水事故についても同様に

『国(施設管理者たる農政局)』と『点検事業者』に対して賠償責任がある

かもしれません。

今後、裁判などが起きるのか否か動向をみていきたいと思います。

最後に

今回は工業用水利水者、農業用水利水者に多大な影響が及んでおり、その経済被害がどの程度になるのかは、想像もつきません。碧南火力にも影響が及んでいることから、エネルギー問題にも波及する可能性のある大きな事案だと認識しています。

結局、損害賠償といった話が出てくるのかもしれませんが、『そもそもこのような事故を発生させないためにはどうしたら良いのか』を国民全体が我が事として考えていく必要があるでしょう。

高度経済成長期に集中的に整備したインフラも整備してから相当な年月が経過しています。

『インフラはあって当たり前。壊れなくて当たり前。』という認識は改める時期に来ているでしょう。

では、我々に何ができるのか、今回の事案を通じて多くの方に考えてもらえるきっかけとなることを期待しています。

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