【復元解答公開】H29技術士二次試験(建設部門 河川)〜A評価復元解答〜

2022年3月3日

主旨

令和4年試験も申し込みが迫ってきましたね!

今回は、私が実際に受験したH29年度技術士二次試験(建設部門 河川、砂防・海岸及び海洋)で、いずれもA評価をいただいた解答の復元したもの(概要)を紹介いたします。

私は口頭試験時、筆記試験の解答について聞かれることはありませんでしたが、もし聞かれても困らないようにある程度解答を復元して整理しておくことをオススメします。

技術士を持っていれば、管理技術者になれたり、公共調達時に加点されたり、会社として持てる手持ち業務量も増えますから、若手のうちに取得しておくメリットも大きいと感じています!

今から勉強しても全然遅くありません!皆さまの今後の勉強に参考になれば幸いです!

なお、本解答はH29時点のものです。特にソフト対策などはH29当時からかなり取組が進んでおり、状況が今(令和4年2月)とはだいぶ異なりますのでご留意ください(補助河川のL2浸水想定作成状況など)

復元解答

Ⅱ-1-1

地方部の中小河川において、近年発生している水害被害の特徴や課題を3点あげたうえで、その特徴や課題を踏まえ中小河川における水害対策について、ハード対策・ソフト対策の両面から述べよ。なお、中小河川とは、都道府県が管理する河川を指すものとする。(答案用紙1枚以内)

(解答概要)

  • 施策背景として、関東・東北豪雨による被害を踏まえ策定した水防災意識社会再構築ビジョンや H28 台風 10 号による中小河川での被害を踏まえた水防法等の一部改正について説明
  • 特徴・課題として、以下3点をあげて説明
    • 降雨から中小河川への流出が早く急激な水位上昇により住民等の避難時間が確保できない
    • 水位周知河川等に指定されていないことが多く、水位情報等の情報が入手しづらいため、自治体等による避難勧告等の発令の判断が難しい
    • 近年の線状降水帯による局地的な豪雨等、予測困難
  • ハード・ソフト対策として、水防法の改正を踏まえた施策などを説明
    • 水位周知河川等への指定推進。指定が進まない河川における過去の浸水情報からの水害リスク情報の提供(ソフト)
    • 鬼怒川流域で進んでいるマイタイムラインの取組の推進(ソフト)
    • 避難に時間を要する要配慮者の利用施設等の避難確保計画の策定(ソフト)
    • ダム再生ビジョンに基づく補助ダム等の放流設備改良等による洪水調節容量を増やす(ハード)
    • XバンドMPレーダが主要都市周辺にしか配備されていないため、その増設やCバンドレーダのMP化など降雨予測の精度向上(ソフト)

Ⅱ-1-2

ダム貯水池の堆砂について、ダム下流河川への土砂の還元が可能な対策を計画する際の留意点を述べよ。また、ダム下流河川への土砂の還元が可能な対策の事例を2つ挙げ、それぞれについて特徴と留意点を述べよ。(答案用紙1枚以内)

(解答概要)

  • 計画する際の留意点として、以下をあげて説明。
    • 総合土砂管理の観点から、山川海の流砂系で問題ないか確認する必要。
    • 計画堆砂量と比較して、現状どの程度の流入土砂があり、将来的などの程度土砂量が見込まれるのかの予測
  • 対策事例2つとして、「フラッシュ放流」と「排砂バイパス整備」について記載。
  • フラッシュ放流
    • 概要を説明
    • 留意点として、以下を挙げて説明。
      • 「河道内の土砂堆積が進み流下能力上支障が出ないか。」
      • 「下流河川の底生動物、魚類の産卵床等、環境への影響がないか。」
  • 排砂バイパスの整備
    • 概要を説明
    • 留意点として、上記2つの留意点に加え、
      • 「大規模改良工事となるため、ダム湖内への流入土砂が将来的に見込まれるかの予測・検討が重要である」ことを追加で説明

Ⅱ-2-1

近年、想定を上回る規模の災害の発生も見られる中、ハード対策に加えて被害想定範囲等を示したハザードマップを活用したソフト対策の重要性が増していることを踏まえ、以下の問に答えよ。
(1)河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を選択し、被害想定区域の設定からハザードマップの作成に至る手順を概説せよ。
(2)(1)で扱ったハザードマップについて、活用上の留意点を述べよ。
(答案用紙2枚以内)

(解答概要)

  • 施策背景として、関東・東北豪雨による被害を踏まえ策定した水防災意識社会再構築ビジョンや H28 台風 10 号による中小河川での被害を踏まえた水防法等の一部改正等ソフト対策の重要性が増していることを説明した上で、「河川」分野を選び回答する旨、説明。
  • (1)被害想定区域の設定手順について、以下説明。
    • 平成 27 年の水防法改正を踏まえ、想定最大規模の浸水想定を河川管理者が作成することとなったことを説明
    • 想定最大規模の浸水想定の設定方法として、全国を15ブロックに分け既往最大雨量等を参考に、年超過確率 1/1000 以下となるような想定し得る最大規模の洪水を設定し、氾濫ブロック毎の最大浸水範囲を包絡するように浸水想定区域を設定
    • 合わせて、家屋等氾濫想定区域も流速・水深を考慮して設定
    • これを河川管理者が市町村へ提供し、この情報を参考に被害想定区域の設定を行う
  • 次に、市町村におけるハザードマップの作成手順について、
    • 河川管理者からの情報を基に、避難所・避難場所、避難経路等の設定について検討を実施広域避難等が必要な場合は、近隣市町村と避難場所等を調整し、記載することが望ましい。
    • 設定した情報を図に落とし、ハザードマップを作成し、住民等へ周知。
  • (2)活用上の留意点として、以下を説明
    • 想定最大規模の浸水想定の作成が、直轄管理区間では進んでいるが、都道府県管理河川では進んでいないことから、HMを活用する際、県管理区間の周辺に住んでいる場合は示されている範囲以上に浸水する可能性があることも踏まえ、早めの避難行動を取るよう留意する必要がある

Ⅲ-1

わが国では、高度経済成長期に社会的要請に基づき急速に整備した社会資本の老朽化に対して、厳しい財政制約の下、効率的に対応していく必要がある。そのような状況を踏まえ、社会資本の整備や維持管理の分野においては、既存ストックの有効活用を図ることが求められている。河川、砂防、海岸・海洋分野における既存ストックの有効活用に関して、以下の問に答えよ。
(1)河川、砂防、海岸・海洋分野において、現在取り組まれている既存ストックの有効活用に資する具体的な取組の例を2つ挙げ、その概要を説明せよ。
(2)今後、より積極的に河川、砂防、海岸・海洋分野における既存ストックの有効活用を推進していくに当たっての課題を2つ説明せよ。
(3)(2)で記述した課題に対して、それぞれの改善方策を提案せよ。
(答案用紙3枚以内)

(解答概要)

  • 施策背景として、以下説明
    • IPCC5次報告等に指摘されている「地球温暖化」による一度に降る降雨量の増大や渇水頻度の増大、H28 台風 10 号による中小河川での被害等を踏まえ、「既存ダムの有効活用」が生産性革命の取組の1つにも挙げられているほか、河川法・水機構法の一部改正により補助ダム等の改良工事を国等で代行できる制度が創設されるなど、「ダム再生」の取組が非常に重要な施策となってきている。
    • そこで、ここでは「河川」分野における既存ストックの有効活用に資する具体的な取組として「ダム再生ビジョン」に基づく施策を2つ例示することとする旨、説明
  • (1)具体例2つを以下、説明
    • 既設ダムの運用改善(事前放流等) (ソフト対策)
    • 既設ダムの放流設備の増設等ダム再開発(ハード対策)
  • (2)推進するにあたっての課題
    • 既設ダムの運用改善(事前放流等)の課題
      • 発電事業者等利水関係者との合意形成。水位を落としたが戻らなかった場合の補償など
    • 既設ダムの放流設備の増設等ダム再開発の課題
      • 放流設備の増設等により、洪水調節機能の大きな向上が見込まれる場合において、ダムの構造上、工事期間中一時的に水位を大幅に下げて工事を実施しなければならない必要が生じる恐れがある。
  • (3)各課題への改善方策
    • 既設ダムの運用改善(事前放流等)の課題に対する改善方策
      • 降雨予測精度の向上(XバンドMPレーダの増設、CバンドのMP化等)
      • 減電補償について、現在は財務省と調整し予算費目としては堰堤維持費で対応することとしているが、財源について補正予算等で対応するなどは決まっていないという行政上の課題を整理しつつ、運用面において降雨が見込まれない場合は、貯水位を上げて運用しても良いというルールを作るなど、発電事業者等利水者と一体となって検討を進め合意形成を図る。などの改善方策により利水者との調整を進める。
    • 既設ダムの放流設備の増設等ダム再開発の課題に対する改善方策
      • 現在同一水系内に複数ダムが存在する水系が多くある。工事を実施するダムの利水容量を一時的に同一水系内の他ダムに振替、改良工事をできるよう調整を実施
      • 技術開発の観点から、死水域を洪水調節容量に活用するためダムを運用しながら放流設備を増設する技術が開発されるなど、今後も技術開発を進める。
      • その際、気候変動等への対応も考え、将来改良する際も手戻りの無い設計手法を検討。 等の改善方策を説明

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R5年度技術士(建設部門_河川)(1)勉強法〜令和5年度水管理・国土保全局予算決定概要〜 | うつ×育児×転職×元官僚×技術士×ダム (ikujiojisan.biz)